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「土台作りの時間」は残されているか。高木・長崎がギリギリの夏に見出した可能性

2026.10.13

V・ファーレン長崎、西果ての野望#9

2018年に「長崎スタジアムシティプロジェクト」を立ち上げた時、遠い夢物語に過ぎなかった。それから6年でJリーグの1つのモデルケースになるような大型複合施設は完成し、チームは2度目のJ1昇格を果たした。しかし、まだ夢の途中。長崎という地方都市を舞台に、J1での躍進、そしてその先にあるACL出場を想い描く――番記者・藤原裕久が西の果ての野望を現在進行形で伝える。

第9回は、夏の補強戦略と新戦力によるチームの変化を掘り下げる。ACL出場を目標に掲げながら、リーグ中断前は15位と苦戦。相次ぐ故障者への対応に追われ、夏の補強も当初のプランから軌道修正を迫られた。それでも、リーグ中断期間の戦術的な試行錯誤と新戦力の加入によって、チームには少しずつ変化が表れ始めている。問題は、その変化を結果につなげるまでの時間が残されているかどうかだ。高木琢也監督の下で進む「土台作り」と、目標達成への責任。その両立が、長崎のシーズンの行方を左右する。

 リーグ再開となった千葉とのアウェイゲーム。敗戦が目前に迫った終了間際、保田堅心のゴールがネットを揺らした。下位相手との引き分けを手放しで喜ぶわけにはいかない。それでも、この勝ち点1には、中断期間に長崎が取り組んできたものと、ギリギリで進めた夏の補強の手応えが、確かに詰まっていた。

 中断前の8試合で長崎は2勝2分4敗の15位。評価はそれぞれだろうが、開幕前に「ACLを目指す」と語ったクラブの成績としては厳しいものである。特に第3節の柏戦(2-4で敗戦)では、試合後に「同じ3バックのチームとは思えない。差があった」と語る選手が出るほど大きな差を見せつけられている。その後、少しずつ改善してはいるものの、黒星先行の厳しい状況が続き、上位争いには顔を出せていない。

 苦戦した最大の理由は、やはり最終ラインを中心にケガ人が続出したことだ。クラブとして8年ぶりのJ1リーグ、夏開幕という未経験の中で、試合を重ねるたびに故障者が出る非常事態に陥ったのである。そんな中、チームは起用や対応をやりくりしながら故障者の復帰を待つ我慢の戦いを続けることになるのだが、同時に補強による対応へも動いていた。

FWとCBの補強が難航。増山朝陽の復帰に込めた複数の狙い

 当初、クラブが開幕後の補強でポイントとしていたのはFWとCBだった。

 どちらもJ1でプレーする主力を候補としていたという。このうち、FWは開幕前から獲得を検討し、リーグ開幕後も交渉を継続しているターゲットがいた。だが、他クラブとの競合の末に最終段階までこぎつけながら、候補のFWは他クラブへの移籍を選択する。層が薄く、チアゴ・サンタナ以外に得点源として計算できるFWがいない状況を踏まえれば、FWの補強を諦めるわけにはいかない。そのため、クラブはすぐさま別の日本人FWの獲得を探ったのだが、時はすでに8月下旬(登録ウインドーは9月16日まで)。ここに至ってクラブは、新たな日本人FWの獲得は難しいと判断し、日本人FWが獲得できなかった場合に備えて検討していた外国籍FWの獲得へと舵を切ることになる。

 その中で、2部とはいえポーランドリーグで実績を残し、獲得可能な候補として浮上したのがブラジル人FWのジョナタン・ジュニオールだった。ジョナタンと、彼が所属するスタル・ジェシュフの事情も踏まえながら、交渉は重ねられた。協議が予想より難航した面はあったものの、ジョナタン自身が移籍を希望していたこと、補強戦略的にFWを諦められないクラブの事情もあって、どうにか合意が成立する。

 一方で、当初のプランから軌道修正されたのがCBだ。こちらも、J1で活躍する日本人CBをターゲットに具体的な段階まで交渉は進んでいたという。だが、獲得のタイミングに合わせるように、ケガで離脱していたCB陣の復帰や復帰見込みが立ったため、CBの補強は急きょ見送られることが決定する。

 それでも、現場には夏のウインドーで戦力の上積みをしておきたい思惑があったようである。そんな中で急浮上したのが、サイドのスペシャリストである増山朝陽の復帰プランだ。

……

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Profile

藤原 裕久

カテゴリーや年代を問わず、長崎県のサッカーを中心に取材、執筆し、各専門誌へ寄稿中。特に地元クラブのV・ファーレン長崎については、発足時から現在に至るまで全てのシーズンを知る唯一のライターとして、2012年にはJ2昇格記念誌を発行し、2015年にはクラブ創設10周年メモリアルOB戦の企画を務めた。

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