REGULAR

サッカー監督の全ては「選手」、ブランドディレクターにとっての「全て」とは何か?

2024.04.17

強いからかっこいいのか、かっこいいから強いのか
――サッカークラブ・ブランディング探求
#03

鎌倉インターナショナルFCの監督とCBO(ブランディング責任者)を兼任し、2024シーズンからはテクニカル・ダイレクターおよびCBO を務める河内一馬は、2018年7月に“あるnote記事”がバズり、一躍サッカー界における「ブランディングの論客」という地位を確立した。競技側の人間でありながらブランディングを語る意味は、サッカー本大賞を受賞したデビュー作『競争闘争理論』の問題意識にも通じている。あれから5年が経ち、サッカークラブの現場でまさにそれを仕事にしている今、あらためて考えてみたい。強いからかっこいいのか、かっこいいから強いのか――その答えを探す旅。

第3回は、サッカー監督にとっての「選手」にあたる存在、ブランドディレクターが「クリエイター」と向き合う姿勢、彼らを束ねる組織づくりについて考察を深めてみたい。

 完璧な「コンセプト」を構築し、理想のブランド像を浮かび上がらせることに成功したとする。またそれを「共有可能な構造物」に落とし込む(前回触れたゲーム・モデルやブランド・アイデンティティがこれにあたる)ところまで、足を踏み入れたとしよう。

 しかしそこに「人」の視点がなければ、ブランディングなんてものは“上手くいくはずがない”というのが、素人が3年間ブランディングに従事する中で最もリアリティを持って学んだことであり、今もこの先もブランディングをする上で一生付き合っていくであろう「難点」だと言える。「ブランディングには『人』の視点が大切」という生ぬるい表現は適切ではなく、“それこそが”最も重要なのである。

「ブランドづくり」=人のマネジメント

 すでに言及しているように、私はサッカー監督の仕事=「サッカーチームづくり」と、ブランディングと呼ばれる「ブランドづくり」は、上位では同じことであると主張してきた。

 その理由の1つが前回の記事で触れた「人間たちに何らかの手段を使って秩序を持たせること」という両者に共通する「行為」にあるが、もう1つ大きな共通点を挙げるとすると、「ブランディングとは組織マネジメントである」という両者に共通した「解釈」があるだろう。

 これはユニバーサル・スタジオ・ジャパンをV字回復させたことで有名な、マーケティングの名プレーヤー森岡毅氏の著書『マーケティングとは組織革命である』の受け売りであるが、私が「ブランディング」というフレーズに興味を持ち始めた20代前半に読んだ本の中で、最も影響を受けたうちの1つである『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』(同著者)の中でも、著者はマーケティング(ブランディングとは正確には異なるが、便宜上ここではほとんど同じこととして扱う)の技術的側面よりも「人(組織)のマネジメント」に多く言及していたことを思い出す。

 当時は「仕事なのだからそりゃそうか」くらいにしか思っていなかったが、今思えば、それこそが現場のド真ん中にいる人間からの金言であったのだ。この記事を書くために久しぶりに読み返すと、内容の一語一句が今の私に突き刺さってくる。マーケティングについて書かれた森岡氏の本が今の私をより動かすのは、私がブランディング(マーケティング)の仕事をしているからではなく、おそらく、サッカー監督という仕事をしていたからだと思うのだ。

競技側が「クリエイター」を知ること

……

残り:2,880文字/全文:4,299文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

河内 一馬

1992年生まれ、東京都出身。18歳で選手としてのキャリアを終えたのち指導者の道へ。国内でのコーチ経験を経て、23歳の時にアジアとヨーロッパ約15カ国を回りサッカーを視察。その後25歳でアルゼンチンに渡り、現地の監督養成学校に3年間在学、CONMEBOL PRO(南米サッカー連盟最高位)ライセンスを取得。帰国後は鎌倉インターナショナルFCの監督に就任し、同クラブではブランディング責任者も務めている。その他、執筆やNPO法人 love.fútbol Japanで理事を務めるなど、サッカーを軸に多岐にわたる活動を行っている。著書に『競争闘争理論 サッカーは「競う」べきか「闘う」べきか』。鍼灸師国家資格保持。

RANKING