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“再開試合”の雪辱を今!モンテディオ山形は滑り込んだプレーオフで奇跡を起こす

2022.10.28

2022J1参入POスペシャルプレビュー~モンテディオ山形~

いよいよ30日に幕を開けるJ1参入プレーオフ。1チームだけが昇格を懸けて、J1クラブと対峙する権利を得られるこの痺れる舞台が、3年ぶりに帰ってきた。2022年シーズンのJ2リーグ6位はモンテディオ山形。シーズン前には昇格候補の呼び声も高かったチームは、決して思うような戦いを続けてきたわけではないが、それでも最後に地力を発揮して何とかJ1への可能性を繋ぎ止めた。プレーオフ1回戦の相手は3位のファジアーノ岡山。果たしてこの一戦はどういう展開を辿るのか。モンテディオ山形の番記者、佐藤円が注目の90分間をプレビューする。

2度のプレーオフを戦ったクラブの経験値

 シーズン終盤、J1参入プレーオフ圏内へのボーダーラインを視野にとらえながら足踏みが続いていたモンテディオ山形が、ようやくそのラインを突破し、プレーオフ出場を決めたのはホームで行われた最終節のこと。相手は勝点1差の6位・徳島ヴォルティス。8位・山形にとっては、この直接対決に勝利することが絶対条件だったが、ディサロ燦シルヴァーノの2ゴールもあり3-0で勝ち切った。あとは、同時刻にキックオフされたブラウブリッツ秋田対ベガルタ仙台の結果次第だったが、7位・仙台が0-0のドローに終わったため、山形が逆転で6位に滑り込んだ。

 山形がプレーオフを戦うのはこれが3度目、いずれも6位での出場となる。1度目は石崎信弘監督が16年ぶりに復帰した最初の年、2014年。準決勝・ジュビロ磐田戦でのGK山岸範宏のアディショナルタイムの決勝ヘディングゴールという強烈なインパクトを残したシーズンで、決勝でもジェフユナイテッド千葉に勝利し、08年以来2度目のJ1昇格を成し遂げている。

 この年はJ1クラブライセンスを持たないギラヴァンツ北九州が5位に入ったことで、準決勝が3位・磐田と6位・山形の対戦となるイレギュラーな展開となった。また、山形はこれと並行で例年より日程が前倒しされた天皇杯でも勝ち上がっていたため、3週間にプレーオフ準決勝と決勝、天皇杯準決勝と決勝の4試合を戦う、目まぐるしいポストシーズンとなった。

 2度目は木山隆之監督の3年目となる19年。2年連続二桁順位に終わって迎えた勝負の年は、前期を首位でターン。その後は徐々に順位を下げたが、6位にギリギリで踏みとどまった。J1 16位との決定戦が加わった「J1参入プレーオフ」となって初めての出場。プレーオフ1回戦は3位・大宮アルディージャを2-0で下したが、2回戦は4位・徳島に敗れ、J1 16位との決定戦に進出できず。シーズン中の勝点70は22クラブ制になってもっとも多かったが、それでもJ1昇格には届かなかった。

苦しいシーズンの末に掴んだラストチャンス

 3度目のプレーオフ進出を果たした今季は、勝点64にとどまる苦しいシーズンだった。開幕前の予想では、山形を昇格候補に推す声も多かった。昨季途中からの指揮でチームを蘇生させ、攻撃的スタイルをさらに進めたピーター・クラモフスキー監督の続投や的確な補強に加え、クラブの業績や将来性も含めて評価された結果だったと思われる。

 開幕直後のスロースタートは“恒例行事”だが、5月のGW期間の4連勝を中心に、9戦無敗で一時は4位まで順位を上げている。しかし、5月から藤本佳希や山田康太など散発的に出ていた負傷離脱者の数が6月にはピークに達し、一時は二桁を越える状態が続いた。また、その苦しい時期に連戦が多く、試合に出続けている選手は疲労が抜け切らず、こなすのが精一杯な中、次の試合に立ち向かい続けた。この時期はトレーニング環境も十分ではなく、チームとして進歩していくことが難しい時期だった。

 また、8月下旬にはチーム内で選手、スタッフにコロナ感染が蔓延。メンバーが規定人数に達しなかった第33節・大宮戦が中止に追い込まれ、クラモフスキー監督を含むチームスタッフの半数以上が陽性者となった。この時期は練習取材も許可されず、チーム内の状況は伝わってこなかったが、チームを動かすこと自体が困難だったことは容易に想像できる。

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Profile

佐藤 円

1968年、山形県鶴岡市生まれ。山形のタウン情報誌編集部に在籍中の95年、旧JFLのNEC山形を初取材。その後、チームはモンテディオ山形に改称し、法人設立、J2参入、2度のJ1昇格J2降格と歴史を重ねていくが、その様子を一歩引いたり、踏み込んだりしながら取材を続けている。公式戦のスタジアムより練習場のほうが好きかも。現在はエルゴラッソ山形担当。タグマ「Dio-maga(ディオマガ)」、「月刊山形ZERO☆23」等でも執筆中。

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