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グランパスの緻密な集客。 そもそもチケッティングってなんだ?

2018.11.12

【Jクラブ特集第2弾】集客したければ魅了せよ――偶然には頼らない名古屋グランパス Episode 4


近年ようやくJリーグでも“デジタルマーケティング”を取り入れるクラブが増えてきた。ただし、デジタルデータで数字が見えるからといって、すぐ集客に結びつくわけでもない。各クラブ集客には緻密な“チケッティング施策”を行っている。

今回インタビュアーである私がチケッティングについてズブの素人ということもあり、チケッティングのイロハから細かい施策にいたるまでを、株式会社名古屋グランパスエイト マーケティング部 ファンデベロップメントグループ グループリーダーの遠藤友貴彦氏に伺った。遠藤氏は、グランパスの観客増加のキーマンである。入場者数を伸ばし続ける裏には地道な施策の積み重ねがあった。


スタジアムの雰囲気を作ることもチケッティング


—— まずチケッティングという言葉に馴染みのない人も多いと思います。そもそもチケッティングとは何ですか?

 「一言で言うと、お客様が会場に来る仕組みづくりです。チケットを買ってスタジアムの席に着くところまでの仕組みをどうやって用意しておくかがとても重要で、その仕組みづくりがチケッティングです。例えばゴール裏で応援したいという人、指定席で見たい人、全く何も知らない人に対して、それぞれアプローチの仕方はすべて異なります。どのお客様にどのタイミングでどう売っていくか。例えば、スポンサー向けの販売や、親子招待の受付、一般のファンクラブの人の先行販売などなど。加えて、どこに座ってもらうかもチケッティングの一つです。例えば、3年前のスタンドと比較していただくとわかるんですが、バックスタンドが結構ガラガラだということがありました。豊田スタジムの4万人の箱になると、1階のバックスタンドさえ埋まらないような状況でした。そこを埋めないとスタジアムの一体感も作れないし、風間さんの言う“勝つ雰囲気”が作れません。今はそこをどうやって埋めていくかに取り組んでいます」


—— いろんな人たちというのは、どれくらいの数をセグメントしているのですか?

 「数えたことはないですが、地域、来場回数、ファンクラブ会員かどうか、シーズンチケットを購入されているかどうか、男女、昨年来ているかどうか。単純に来場回数といっても今年来ているのか、2~3試合以内に来ているのか、3年くらい来ていないのかも含めて、そこだけでも相当な数の切り口があります」


—— たくさん種類がある中で、グランパスが重点的にやっているところはどの辺りですか?

 「重点的にどこの試合というより、年間通してやっていくことです。来てもらった人にまた来てもらう仕掛けを常にやっていかないといけないんです。久しぶりの人に対して『また来てください』というのと、直近で来てくれたから『また来てください』というところ。新規だけにこだわったり既存だけにこだわったりはしていません。例えば、集客が期待できる夏休みやゴールデンウィークには1万人無料招待をやっています。家族で来やすいタイミングですので、観戦のハードルを下げて新規のお客様に来てもらおうと。それ以外の試合はまた別の施策をしているので、年間通してどこに重点を置いているかではなくて『この試合はここを狙おう』みたいな形で狙い撃ちしています」


—— ドイツやアメリカのスポーツ観戦チケットではダイナミックプライシングを導入して、1年で売り上げが7倍増えたという話も聞いたことがあります。

 「7倍は驚きの数字ですね。2倍になることはあり得る話です。普通にオークションのサイトを見ていると、2~3倍の金額で売っていたりすることは当たり前にあります。2000円の自由席が7000円で取引されたとしたら5000円の伸び幅があるわけです。グランパスのチケットはもともとの金額がそんなに安くないとは思っています。ただ、万人に受け入れられる金額設定は存在しないので、その人が欲しい(この金額なら観戦したい)と思っている金額の最高値で見ていただくことがうちとしては強化費、運営費につながるので、そこに取り組んでいくことが大事です」


—— ダイナミックプライシングの側面として、売れない試合を安くして入場者を増やすということにも大きい効果があると思います。

 「売れない試合というより埋まってない席種を埋めて一体感を作り出したい時に、そういう観戦ハードルを下げる価格設定はありだと思っています」


音楽業界は高い席から売れるがサッカーは……


—— なかなかJリーグでダイナミックプライシングが進んでいかない理由はどんなところにあると思いますか?

 「まずは満席にしてチケットをみなさんが欲しいような状態、試合が見たいような状態にならないと、それは取り組めないところです。この3年間やってきたことは、まずは満員にするというところを取り組んできました。そこが前提になるので、それをやらなければ結局ダイナミックプライシングも受け入れてもらうことが難しいです。設定している金額ですら買ってもらえない状況なので、着手できないですよね」


—— 僕が読んだビジネス書には、埋まらない時こそやれ、とありました。値段を下げると埋まるから満員になる前からやらないとダメだと。そういう考え方はJリーグの場合あまりならないですよね。

 「なってないですね。その本に書いてあることは確かです。グランパスの場合、それはメルマガなどで特定したお客様に限定でやっています。正規の金額で買ってくれる人がいるのに、全員に対して安くしたら、ただただ興行収入を下げるだけになります。例えば、3回来てくれた人を1回無料にするのは、ある意味ダイナミックプライシングになっています。グランパスがやったのは観戦スタンプラリーで、3試合観戦したら1試合無料とか。これは結果的にお客様からすると、25%引きみたいな価格になります。それはダイナミックプライシングとも言えます」


—— 他のクラブもそのようにやっているのでしょうか?

 「そうですね。やっているところもあると思うんですけど、グランパスはそれを細々とたくさんやっています。例えば10月のFC東京戦では、8月の4試合に全勝したので、それに来てくれた女性に対して『勝利の女神』と名付けて、『勝利の女神クーポン』というのを出して、もう1回スタジアムに来てもらうということをやりました」


—— そういうストーリーがあると、買う側も乗り気になりますね。

 「そうですね。また来てもらうきっかけや理由をこちら側が提供していかないと、繰り返し来てもらうのは難しいと思います。逆に負けたという体験も大きいので、今度は勝ち試合に行きたいということもあると思います。グランパスの場合、前半戦では苦しんでいますからね」


—— サッカー業界と他業界のチケッティングの違いで感じたことはありますか?

 「サッカーの場合、一番安いゴール裏の自由席から埋まりますよね。ゴール裏は埋まっているのにメインスタンドがガラガラ、バックスタンドもガラガラというのがサッカーでは結構あります。音楽系ではアーティストに一番近いところで見たいから値段の高いアリーナ席から売れていきます。でもスタンドの一体感を生み出すためには、応援する人がゴール裏だけに集まればいいというわけではありません。それだとメインやバックスタンドでは応援を楽しめる環境がなくなってしまうことが常々サッカーの課題だと思います。これはスポーツというよりはJリーグの問題だと思います。グランパスで課題だったのは、メインやバックで手拍子や声を出す環境を作りづらかったことです。スタンドの人たちみんなが楽しめる一体感を生み出すため、空気をどうやって作ればいいかを今も常に考えています。ゴール裏の人たちがメインやバックに行ってくれることが実は一番嬉しいんです。でも、それらの席は高いですし、毎試合見るにはハードルがあります。ですので、例えばシーズンチケットを買っている人でも、さっきのスタンプラリーみたいな形で『3試合見たら指定席でタダで見られる』となったら見に行ってくれる人もいます。ゴール裏の人たちはメインにいてもバックにいても声を出したり拍手をしてくれるので、一体感ができてくる。最近スタジアムの雰囲気が良くなったとお客様に言ってもらえるのも、手拍子がメインやバックから起こる環境ができてきているからだと思います。スタジアムのいい雰囲気を作るために、チケッティングで、誰にどこに座ってもらうかまでの仕掛けを作ることが一番重要なポイントです

ゴール裏だけでなくメインやバックでも応援しやすい環境を作っていく © N.G.E


—— メインやバックでの応援は、日本の環境では能動的にやりづらいというのはありますね。

 「やりづらいですね。初めて来たお客様はなおさらです。誘われてきたお客様もなおさらです。そういったお客様に『手拍子して楽しかった』と言ってもらえるようになるには、そういう環境をスタンドに作っておかないと難しいです」


—— 自分の意見ですが、クラブとサポーターが一緒にやってもいいと思うんですが、メインとかバックとかに応援のアンバサダーを置いてもいいんじゃないかなと思いました。韓国のU-20W杯では盛り上がるようにそういったアンバサダーを置いていました。韓国人のボランティアの女の子が各国のサポーターがいる前に行って、その国のユニフォームを着てバルーンスティックを持って盛り上げていました。

 「グランパスは自分たちが支えているという強い気持ちを持ってくれているサポーターがとても多いです。なので、サポーターからも発信してもらって、その空気がスタジアム全体を自然に応援できる空気にできることが一番いいと思います。ゴール裏は、瑞穂も豊田も満員なんです。1階席を取るのは相当難しいのが現状です。ゴール裏のチケット入手が難しくなると一つ問題なのは、新しいお客様が楽しそうだと思ってもゴール裏に行けなくなることです。ということは、今ゴール裏にいるお客様たちにメインやバックでも観戦してもらい、ゴール裏以外のスタンドも楽しいぞ、という環境を作らないとグランパスが広がっていかないんです。既存や多く来てくださるお客様は、できるだけ他の席種でも一緒に闘ってもらえたらうれしいです」


―― 他にはサッカー特有というチケッティングありますか?

 「サッカーのお客様が他のお客様と大きく違うと感じているのが、見にくるお客様は自分たちがチームを勝たせるため、応援するために来てくれているんですよね。それは僕がお客様側の時も思っていました。満員のスタジアムで戦ってくれたほうが選手は最後の1歩が出るかもしれない。お客様の声援のおかげで、最後体を張って守れるかもしれない。それはスポーツ特有のお客様との一体感だと思っています。楽しいサッカーをするから人が見にくるのは当然あると思っていますが、逆にお客様がたくさん来るからチームが強くなっていく相乗効果は絶対にあると思っています。負け続けている時こそお客様に来てもらって勝たせる環境をお客様と作っていかないといけないんです。だから一人でも多くの方が来てくれることで、より強い力や声になると思ってやっています。社内では数字ばかり追っかけていると言われていますけど、その数字にこだわるのは、一人でも多くの力をスタジアムに集結させるためです。それはサポーターと同じ思いだと思います。だからこそ、もう1人誘ってきてください、もう1回来てください、という呼びかけをやっていかないといけないと思っています」


—— これをグランパスのサポーターが読んだら、俺たちももっと協力しようというマインドになってくれるんじゃないでしょうか。

 「グランパスのサポーターはみなさん優しいです。クラブの取り組みを本当によく見てくれています」

「グランパスサポーターは本当に優しい」と笑顔で語る遠藤氏


Jチケに変えて始まったデジタルマーケティング


—— Jリーグチケットにしたことによってかなりデータを活用できるようになったかと思います。いくつか具体例を教えていただけますか?

 「まずどういうお客様が来ているかが見えるようになりました。具体的には年に1回来ているお客様が何人、年に2回が何人、というところが見えるようになりました。じゃあ、年1回の人に2回来てもらうための施策、10回以上来ている人たちにシーズンチケットを買ってもらうための施策というのをそれぞれ具体的に考えられるようになりました」


—— 年1回の人に対してはどういうアプローチをしたんですか?

 「シーズンが始まったタイミングで、そのままシーズンを通して熱を持ってくれている人たちは開幕戦とか3月に来るんですけど、そうじゃない人たちはそのまま来なくなったりするので、4月のタイミング以降に、なるべく早く今年も来てもらうために、お久しぶりクーポンみたいな形でお得に観戦できるタイミングがありますというのを個別に知らせて、来場回数や購入履歴をみながら販売していきます」


—— 人によって割引を変えられるということですね。

 「そうですね。さっきのダイナミックプライシングを個別にやっていたというのは、そういうことです」


—— 人の属性によって割引を変えるということができるのは大きいですね。

 「それは多分ダイナミックプライシングで一番細かく施策をやっていかないといけないところです。個人の属性によって個人別価格が設定されているイメージです。他クラブからの問い合わせで『どういうことをやっているんですか』と聞かれることもあるんですが、担当者がどういうお客様にどういう形で来てほしいかを考えることが一番重要なんです。それがないと『どうやって増やせますか』と聞かれても、『どうやって増やしたいんですか』って逆に聞くことになります。それぞれのクラブによってやり方や方針が違うから、こうやればいいという正解はないと思います。クラブがどういうお客様に来てほしくて、どのタイミングでどの席に来てほしいかを持っていることが大事です。デジタルマーケティングというのはあくまでツールで、やり方の一つ。一番はどういう形でスタジアムを埋めていきたいか、なぜ埋めていきたいか。さっき申し上げたようにグランパスはチームの勝利に貢献するための集客という考えが根本にあります」


—— デジタルマーケティングというと温度感のないもののような気がしますが、実はそこはヒューマニティーみたいなのがすごい大事だということですね。

 「そうですね。社内でも僕は数字バカと言われますけど(笑)。数字も確かに見ていくことは大切ですけど、埋まっているスタンドを見たり、手拍子が起こっている姿を見ることが一番重要です。そこが変わってきたことを肌で感じること。自分もちゃんと見ていますし、クラブ全体としても感じてきていますし、お客様もどんどん感じてきてくれていることが一番大きいと思います」


—— グランパスのメルマガはJリーグからも評価されていると聞きました。メルマガは具体的にどういうことをされていますか?

 「個別のキャンペーンに関して、人それぞれのものをメルマガで出し分けています。例えば前日のメールだったら、ホーム自由席の開放エリアが豊田スタジアムだと試合ごとによって違うんですけど、ホーム自由席を買っている人にその案内が入っているとか。あとはファンクラブに入っていない人に対して入会の告知が入っていたり。座る席種とか購入キャンペーン別によって出す内容を分けています。誕生日の人だと、試合前日に来るメールに、あなたはこの試合で誕生日シールがもらえますよ、と伝えたり」


—— どのくらい種類を送るんですか?

 「前日メールは多い時で8種類です」


—— 何人で8種類を作るんですか?

 「2人です。コンテンツがたくさんあって、それを出し分けるだけの作業ですが、大変さはありますね。前日のメールは既に購入済みの人には『チケット購入お求めいただきありがとうございます。明日はこんなイベントがあります』と。購入していない人には『チケットの前売り価格はいつまでです。こんなイベントがあります。ぜひ来てください』と。買っている人、買っていない人でも分けることができます」


—— これを毎節やるのは大変ですね。

 「やりたい施策が決まるのがギリギリだったりするので、素早い対応が重要です。例えば10月に行った勝利の女神クーポンは、3~4日間で企画からメルマガ配信まで行いました。10月のチケットは9月1日が売り始めですが、8月26日の試合終了後に、なにかもう一つ企画ができないかということになり、26日に8月の全試合が終わって勝利の女神の対象者が何人いるのか、そのうちの何%が来てくれたらこのスタンドが埋まるのか、そういう試算を大急ぎで行い実施しました」


—— ストーリーや企画を考える必要があるんですね。その企画力はどこから出てくるんですか?

 「企画力というか、常にどういうお客様が来ているかをデータとして見ておかないと、この企画をやった時にこれくらいのお客様が来てくれるんじゃないかということがわかりません。常にデータを追って肌感を持っていることが大事ですね」


—— 勝利の女神クーポン企画はすごくいい企画だなと思います。ご自身でもいい企画を思いついたなと思いましたか?

 「その時はガールズフェスタが10月にあったので、そういうイベントがあってこそ考えた企画です。ようやくそこにはまる企画ができたという安心感のほうが大きかったかもしれません。でも企画自体はすごく良かったと思いますが、勝利の女神クーポンは使えない方も多くなってしまったので、企画としては大成功とは言えません。せっかくクーポンを配信したのに、そのクーポンを使えない人がたくさん出てしまいました。結局対象にしていた席種を増やして対応しました」


—— 厳しい仕事ですね。でも、それだけすばやくチケット施策を実施に移すのは大変だと思いますが、上長への承認プロセスはどうされているのですか?

 「なかなか集まって施策を皆で考え議論するということが難しいのですが、データを元にメッセージングアプリやメールで意思決定を行っていくことができています。自分が8月26日の浦和戦が終わって来場データを見て、10月7日のFC東京戦をこのまま販売したらスタンドが埋まらない可能性があることを共有し、施策を考えて承認まで1日ないスピード感で進められています。グランパスのチケット施策はそんな感じでめっちゃ早いですよ」


—— そこからメルマガに落とし込むわけですが、メルマガはビジュアルもいいですよね。

 「相当良くなりましたよね。最初にメルマガを始めた時は僕がパワーポイントで画像を作っていて(笑)。時間がかかるから施策が追いつかないんです。思いついても実施できない。今はビジュアルを作ってくださるパートナーもいて社内の体制も整ってきたので、思いついたらできる環境になりました。

しっかりとデザインされた名古屋のメルマガ

 すみません、デジタルマーケティングができるようになったことで、すごい重要なことを伝え忘れていました。今は来場したお客様に、その試合どうでしたか、という観戦者アンケートがメルマガで、できるようにしているんです。毎試合じゃないですけど出しています。その試合でのお困りごとをヒアリングして、その試合で良かったこととか、イベントで楽しかったことを聞くことができます。また、運営だったら、入場ゲートでお困りごとがなかったか、トイレでお困りごとがなかったか、というようなこともあります。広告で言えば、広告を出したものを実際に見て来てくれているのか。そういうことが今まではできなかったんですけど、それができるようになってきているので、来てくれた人の声をもとに、さらによくしていくことができています」


—— 8月11日の鹿島戦のあとにはどんな意見がありましたか?

 「ほとんどが満足されている意見でした。試合に勝って良かったとか、満員の体験ができたとか、満員の中の一人になれて嬉しかったとか、ユニフォームがもらえて嬉しかったとか。あとは、夏まつりやビアフェスはこのあともずっと続けてほしいという声もいただいています。そういうプラスの声は自分たちの力にして、マイナスの声はどんどん改善していく。デジタルマーケティングができるようになって全部署の社員がお客様の声を見ることができるようになったのは、本当に大きいことだと思います」

8月11日の鹿島戦はメインもバックも見事に埋まった © N.G.E.


—— デジタルマーケティングに振ったことで得られるものは、チケッティングだけじゃないということですね。

 「そうです。チケットを買ってきてくれる人というのは、来場者を捉えるということなので。選手もそうですし、社員もそうですけど、見てくれたお客様に対して『ご来場ありがとうございました』って届けられるのはデジタルがなかったらできません。試合の最後に僕らがゲートに行って、『ありがとうございました』と直接お礼が言える人ってごく少数に限られてしまいますからね。でもデジタルマーケティングならそれをちゃんとメールで届けられる。選手も来てくれたお客様にお礼を言いたいという気持ちがあるので、メルマガでは選手のお礼メッセージも載せています」


―― あとデジタルマーケティングは導入しても、そのあとのストラテジーを考えられる人がクラブ内にいないと難しいですよね。

 「結局デジタルマーケティングができる人が一人増えたって、クリエイティブを作れる人とか企画を考えられる人、お客様が実際に来てくれた時に運営を回せる人とかがいなければダメなんですよね。グランパスは全般的にそれぞれプロフェッショナルとしてできる人がどの部署にもいます。デジタルマーケティングはあくまで一つのツールでしかありません。結局そのデータを使って何がしたいかというところをしっかり持っていないと意味がない。グランパスはクラブとしてしっかり考えを持っています。だから、僕は施策を推進することができるのです」

Photos: Mai Kurokawa

Profile

池田 タツ

1980年、ニューヨーク生まれ。株式会社スクワッド、株式会社フロムワンを経て2016年に独立する。スポーツの文字コンテンツの編集、ライティング、生放送番組のプロデュース、制作、司会もする。湘南ベルマーレの水谷尚人社長との共著に『たのしめてるか。2016フロントの戦い』がある。