失われた10年――
06年ドイツW杯でのアズーリ優勝を一つの節目に、サッカー大国イタリアが凋落の一途をたどっている。原因は一つではない。ピッチ内外の様々なファクターが複雑に絡み合い、出口のない迷路に迷い込んでいる。
そこで今特集では、「戦術」「経営」「育成」の3つのテーマに分けて、それぞれの分野の最前線で活躍する当事者を直撃。フットボリスタの総力を挙げた徹底取材で低迷の理由を解き明かし、カルチョ再生への道筋を探る。
[対談]
パオロ・コンドー(『スカイ・イタリア』オピニオニスト)× 片野道郎
バロンドール投票権を持つ大御所ジャーナリストと考える
イタリアサッカー低迷の理由
10年の低迷はいかにして訪れたのか――
まずはイタリアサッカーの現状分析から始めるべきだろう。
バロンドール投票権を持つ大御所ジャーナリストと一緒に、
カルチョの世界に巣食う問題解決の糸口を考えてみたい。
INTERVIEW
アレッサンドロ・デル・ピエーロ
ファンタジスタは死なない
カルチョ再生計画① 戦術
ザッケローニが語るカルチョの神髄
イタリア人監督は戦術を愛し、模索し、
ディテールにこだわった仕事をしている
「プレミアリーグは一時期20チーム中17チームが外国人監督だった。
セリエAはこれだけの戦術的バリエーションを、17人のイタリア人監督と3人の外国人監督で実現している」(パオロ・コンドー)
欧州中から歴戦の名将が集まった今季のプレミアリーグでイタリア人のアントニオ・コンテが存在感を示しているように、優秀な戦術家たちはカルチョ再生への鍵を握る大きな希望であることは間違いない。
名門クラブを渡り歩いたザッケローニに「戦術王国」の神髄を聞いた。
インタビュアーは日本代表時代の名パートナー、矢野大輔だ。
ANALISI SPECIALE“L'Ultimo Uomo”
ガスペリーニの見通し
ナポリ、インテル、ローマを撃破! セリエA前半戦の台風の目となった伏兵がアタランタだ。この国内随一の育成型クラブを今季から指揮するのは、ジェノアで一時代を築いたガスペリーニ。
3バックの信奉者で人材発掘の達人でもある58歳が、若手集団に植え付けたユニークな戦術とは――イタリアのWEBマガジン『ウルティモ・ウオモ』の分析レポート(16年11月17日公開)を特別掲載。
INTERVIEW
エミリオ・デ・レオ (トリノ戦術コーチ)
デ・レオ先生の戦術講座:噂の最先端理論、
戦術的ピリオダイゼーションって何?
カルチョ再生計画② 経営
レオナルドが語る歪なカルチョの構造
クラブ経営はTV放映権による収入をあてにして
成り立たせるべきではない
冒頭の対談でパオロ・コンドーが指摘したように、イタリアサッカー低迷の最大の理由はピッチ外、つまり経営面にある。
中でもサッカークラブの収入の三本柱のうち、TV放映権料に極度に依存した経営体質はたびたび問題視されてきた。
ブラジルに生まれ、ミランでフロントとしての経験を積み、パリSGの巨大プロジェクトに参画した国際人のレオナルドに歪なカルチョの構造を世界標準と比較してもらった。
INTERVIEW
パベル・ネドベド (ユベントス副会長)
ユベントス復活劇の舞台裏で
中国資本はミラノ勢の救世主になるのか?
お手並み拝見のインテル。“最悪のシナリオ”すらよぎるミラン
進まないイタリアサッカーの構造改革
必要性は誰もが認識。しかし…動かぬFIGC。既得権を手放さないリーグとクラブ
INTERVIEW
マウリツィオ・スティルペ (フロジノーネ会長)
なぜ人口5万弱のセリエBクラブが
新スタジアム建設を実現できたのか
カルチョ再生計画③ 育成
インテル育成責任者が語るカルチョのタレント枯渇問題
育成レベルでの監督のクオリティは非常に高い。
その可能性を信じて投資してほしい
いくら戦術面で優れていてもタレントがいなければ勝てない。
かつてはバッジョ、デル・ピエーロ、トッティ、ブッフォン、ピルロなどワールドクラスのイタリア人スター選手がいた。
カルチョの根幹をなしていた個性豊かな才能はどこへ消えたのか――?
名門インテルで10年間育成部門の責任者を務めるサマデンに、「社会」「構造」「育成メソッド」という3つの側面にフォーカスして話を聞いた。
アズーリ復権の鍵を握るセリエA期待の若手15人
INTERVIEW
ジャンルイジ・ドンナルンマ
ミランの守護神になるために生まれてきた17歳
INTERVIEW
エルメス・フルゴーニ (パルマGKコーチ)
「ブッフォンの育ての親」が分析する
現代GK像とドンナルンマの未来
INTERVIEW
ジョバンニ・カルネバーリ (サッスオーロGD)
経営の成功者が教えるメルカートと育成のバランス
COLUMN
カルチョに魅せられて
①矢野大輔/②宇野維正/③いとうやまね/④いまいみこ
[総括]
逆境でこそ輝くのがイタリア人
個々の独創的なやり方が飛び火し、“大きなうねり”へと昇華する