リーグ戦に比べると重要度が落ち、調整試合に陥りやすいコッパ・イタリア。ベストメンバー規定というものなど存在しないこの国では、準決勝、決勝以外はどのクラブも大幅にメンバーを入れ替えることが慣例化している。逆に言えばターンオーバーの採用を促し、選手層の厚さと戦術理解の浸透度を推し量ることのできる重要な機会ともなる。
ただ今回、ウディネーゼは先日今季限りでの引退を表明したディ・ナターレの他、主力を多少ベンチに置きつつも、格上との対決ということもありターンオーバーは最小限に止めた。それに対しインテルは、直近のリーグ戦から長友とカンパニャーロを除く9人の先発メンバーを代えてきた。
どちらが戦術的に機能したかといえば、間違いなく前者だ。守備では緊密にスペースを閉め、プレスをかける位置やカウンターの仕掛けどころもしっかりと意思統一されている。リーグ戦では控えに回ることの多いマイコスエウとニコ・ロペスの若手2トップも、懸命にチェイシングをこなし相手のビルドアップを阻害していた。一方でインテルは、まったくもってバラバラ。最終ラインは安定してパスが回せず、中盤とサイドはカウンターを気にして引き過ぎ。そんな状態では当然前線も孤立し、ボールを奪ってからのスピーディな展開がこの日は影を潜めた。
右往左往するインテルを前にウディネーゼはペースを上げ、鋭いショートカウンターから切り崩しを図る。そして32分、スルーパスに反応して裏へ出たN.ロペスが中央へ折り返し、これをマイコスエウが押し込んで先制に成功した。
■修正で盛り返すも、1点が遠く
後半、インテルのマッツァーリ監督は大胆な修正に着手。まずは温存していたパラシオを投入し一度1トップから2トップにすると、さらに15分待ってアルバレスをピッチに送る。交代を命じられたのは右ウイングバックのサネッティだった。これにより3バックの左を務めていたカンパニャーロが右SBに、そして左ウイングバックだった長友が左SBになり、超攻撃的な[4-2-3-1]を形成。マッツァーリが昨季まで指揮していたナポリで、劣勢になった時の開き直りで使っていたシステムをそのまま持ち込んだ格好だ。
結果、インテルは一方的に相手を押し込んだ。中央からサイドまでまんべんなくゾーンを支配、カウンター狙いの相手からも粘り強いプレスでボールを奪う。だがゴール前を固めるウディネーゼの前にフィニッシュはことごとく雑になり、ミリートやパラシオもろくにシュートを打てずに時間が経過。最後は昨夏の加入後すぐ負傷離脱を余儀なくされ、最近になって選手登録を済ませたばかりのアルゼンチン人MFボッタを投入したものの、結局同点にすら持ち込めずゲームセットとなった。
若手がきちんと成長し、チームプレーをしっかりこなしたウディネーゼ。そんな彼らを前に、リーグ戦でも控えに回ることが多くなったベテラン勢を中心にしたインテルは、特に前半は押された。それを考えれば、後半は流れをつかんだとはいえインテルの敗戦は妥当だった。
(文/神尾光臣)
<監督コメント>
フランチェスコ・グイドリン(ウディネーゼ)
「この勝利をみんなで喜びたいと思う。(直前の)エラス・ベローナ戦での敗戦から、よく挽回してくれた。リーグ戦では低迷しているが、巻き返しに繋がりそうな内容だった。我われは最初カウンター気味に準備をしていたのだが、(前から)行けそうだったのでアプローチを変えた。選手はよく応えてくれた」
ワルテル・マッツァーリ(インテル)
「我われはこれまでのリーグ戦で、昨季までは主力ではなかった選手たちを使い続けてきた。だからここにきてキレが鈍るのは仕方なく、今日のような試合(カップ戦)では選手の多くを代えざるを得なかった。リーグ戦では選手を替えられない。多くの選手の調子を見るために、今日のような起用法が必要だった」