「優勝争い? どうせ10月には終わるね。ユーベが強ぇからよ」。ナポリが、フィオレンティーナが積極補強を展開していた8月、あのカッサーノが身も蓋もないことを言っていた。もっとも今季のユーベからは、そこまで強い印象は感じられなかった。第8節ではフィオレンティーナに4失点を喫し逆転負けを食らい、期待されたCLではグループステージで敗退。積極的にイニシアチブを握ってはみるものの、ゴールが割れずに下らないミスから失点するという内容の試合もなくはなかった。
だが折り返しの手前で首位にいるのはそのユーベ。そして彼らはリーグ戦で無敗を誇る2位ローマを破った。スコアは3-0。守備では隙を与えず攻撃のチャンスには狡猾と、憎々しいまでの強さを見せつけた。
勝因は、文字通り彼らが“勝負に徹した”ことにあった。今シーズン、特にCLでは自らの攻撃的なサッカーの追求にこだわる傾向があったが、ローマとの対戦にあたって彼らはリアクションから入った。最終ラインはかなり深めに設定し、後方のスペースを消すことに専心する。ジェルビーニョやリャイッチ、またフロレンツィらの高速アタッカーを抱えるローマは、カウンターからまず彼らを動かすことでチャンスを作る。ならばポゼッションはくれてやり、その一方で守備を固め逆にカウンターを狙うことにユーベは注力したのだ。
もっとも中盤の3人の技術が高く、さらにはパス回しにトッティも絡むローマ相手には無謀な賭けにも思えた。実際細かくパスを回され右に左に振り回されるのだが、ゴール前には頑として人数をかけ、カウンターが取れそうな場面では殴りかかるぐらいの勢いで猛烈なプレスをかける。そして、訪れた攻撃のチャンスを点に繋げる。17分、スローインでのリスタートから、エリア内でボールを受けたテベスがタメを作り、スペースに入ってきたビダルにパス。チリ代表MFはこれをきっちりと決め、先制に成功した。
一方ローマも引き下がらず、攻撃のテンポをいっそう上げる。ユーベ陣営がこれに振り回され、レイトタックルから警告を取られるシーンもあったが、それでもサイドには人数をかけ、ゴール前は死守。きっちりとバイタルエリアを締め、シュートに至らせていなかった。細かなパス交換と多彩なポジションチェンジでゴールへと迫るローマの攻撃は、スペースがあることが前提となる。それを消してしまえば、相手が機能不全に陥るのも必然の成り行きだった。