レアル・マドリーの豪華攻撃陣が止めようのないゴラッソを連発しただけでなく、新加入のシドネイとディアキテが初めてCBコンビを組んだデポルティーボの最終ラインがプレゼントしたようなゴールもいくつかあった。リーガのアウェイ戦ではクラブ史上初となる8ゴールの大勝は出来過ぎな印象ながら、5-1で勝利したCLバーゼル戦に続くゴールラッシュがリーグ戦の連敗で生じたプレッシャーを取り払うためのこの上ない良薬となったことは間違いない。
とはいえ、内容的にはまだまだ昨季のレベルには至っていない。前節アトレティコ・マドリー戦では[4-4-2]、直前のバーゼル戦はロナウドを右、ベイルを左ウイングと、いつもと逆サイドに置いた[4-3-3]、そしてこの日はロナウドを左、ベイルを右に戻した[4-3-3]。ベストの攻守バランスを模索するアンチェロッティ監督はいろいろと試行錯誤を繰り返しているが、どう並べたところでこれだけアタッカーを多く起用すればどうしても攻撃偏重となってしまう。
バーゼル戦ではクロースに次ぐ走行距離を記録したハメスの守備意識が向上したと報じられていたが、実際の彼はボールロスト後に3トップとともに前に残っていることが多く、結果として4バックとクロース、モドリッチの6人に守備を任せるシーンがたびたび生じている。それでも守り切れるのなら良いのだが、最近4試合で9失点を許している現状を見る限り攻守のバランスが取れているとは言いがたい。
この日も3点リードで折り返した後半の立ち上がりにデポルの猛攻にさらされると、アンチェロッティはベンゼマを下げてイジャラメンディを投入。中盤にモドリッチ、クロース、イジャラ、ハメスが並び、ロナウドとベイルが2トップを形成する[4-4-2]に変更することで守備のバランスを整えた。やはりハメスをディ・マリアの代わりにインサイドMFに起用する[4-3-3]は守備面のリスクが大き過ぎるのだ。
もちろん4人のアタッカーを前に残している分、ボールを取り返した直後に仕掛ける得意のカウンターの破壊力も増している。計13ゴールを叩き出したここ2試合の大勝は攻撃面のメリットが守備面のデメリットを大きく上回った結果であり、今後も多くの試合ではハメスとBBC(ベイル、ベンゼマ、ロナウド)を同時起用して攻め勝つことが可能だろう。当面はそうやって結果を出しつつ、バルセロナやアトレティコのレベルの相手を見据えた最良のシステム模索を進めていくことになりそうだ。
(文/工藤 拓)
<監督コメント>
カルロ・アンチェロッティ(レアル・マドリー)
「改善が必要だ。今日は我われが持つ質の高さと多彩なゴールパターンを見せることができたが、プレーの継続性とバランスを高めていかなければならない。2連敗の後、2試合で13ゴールを挙げた。それはうまくリアクションした証だ。今はプレー面の問題解決のことしか考えていない。(バルサ、アトレティコとの)勝ち点差は問題ではない」
ビクトル・フェルナンデス(デポルティーボ)
「2-8で負けたチームに主張できることなどほとんどない。酷い結果ながらもポジティブな要素があったのは事実だ。ビルドアップの段階で生じた2、3のミスの代償を払うことになった。相手はマジカルなシュートによる信じられないゴールを決めてくれたよ」