昇格組にして、早々と残留の指標とされる勝ち点40の大台に乗せ、EL出場権争いに堂々と食い込んでいるエラス・ベローナ。ホームのサポーターは、非常に熱狂的であることでも知られている。この試合ではアウェイ側のスペースを確保するため、メインスタンドにもゴール裏の客層があふれ出しており、マルカントニオ・ベンデゴディのスタジアム全体にもの凄い歓声がこだまする。後半戦ではなぜかそのホームで勝ち星に恵まれていないものの、ユベントス戦(第23節/2-2)ではドローをもぎ取っている。相手にとって、やりにくい舞台であることに変わりはない。
しかし復調中のインテルは、まったく彼らを寄せ付けない内容で勝利をもぎ取った。前からのプレスが強烈で後ろも堅い組織的な守備、そこからショートパスで相手のゾーンの間を突くカウンター、そしてサイド攻撃からの2ゴール。マッツァーリ戦術の特長が随所に表れていた。
左の長友は疲労を考慮し温存。その分、というわけではないだろうが、序盤インテルは右サイドから攻めた。Hベローナのマンドルリーニ監督は、ジョナタンを低い位置に押し込むためイトゥルベをこのサイドに当てる。しかし彼にボールが渡る前にインテルは中盤でボールを刈り取るので、ジョナタンは楽々と前に出ることができた。こうしてジョナタンとグアリンは積極的に上がり、このサイドで常に数的優位を作る。そして14分、サイドからドリブルで切り込んだジョナタンが、エリア内まで侵入して低いクロス。これをゴール前で完璧にDFのマークを外したパラシオが合わせて先制ゴールを奪った。
インテルは先制後にペースを落とし、主導権はHベローナが握る。ところが、ここからはインテルの最終ラインが堅守を見せた。特に光ったのは、前節から2戦連続でスタメンに返り咲いていたラノッキア。36歳の年齢を感じさせないほどのキレを発揮するトーニを見事に封じ込めた。彼へのクロスを頭で、足で次々とカット。さらにはアンカーで起用されたカンビアッソとともに、センターラインをがっちりと固めてシュートをほとんど許さなかった。
そして63分には、きっちりと追加点を奪う。移籍早々チームにフィットし、早くもインテルの頭脳として機能しているエルナネスが、中に絞った位置から絶妙なスルーパス。これが外から走り込んだジョナタンへと正確に渡り、エリア内でシュートを放つ。一度はGKに阻まれたものの、ジョナタンは前に突っ込み、そのこぼれ球を拾ってゴールへと叩き込んだ。
この後はHベローナもイトゥルベを右に回したり、FWの枚数を増やしたりして攻めに出たものの不発。試合後にマンドルリーニ監督が嘆いた通り、彼らの攻撃はミスが多くて雑だったが、それを差し引いても集中力の途切れないインテルの最終ラインが堅かったこともまた事実。余裕の対応を見せ、2点のリードを守り切った。これで6戦負けなし。気がつけば4位フィオレンティーナはおろか、少し離れたところには3位ナポリの背中さえも見えてきた。
(文/神尾光臣)
<監督コメント>
アンドレア・マンドルリーニ(エラス・ベローナ監督)
「やはりミスが多かった。ビッグクラブ相手の試合では、こうしたミスを必ず突かれてしまうものだ。そもそもビッグクラブには勝てていないので、このあたりがチームの力量を示している。先取点を取られたことで、その後の反撃も難しくなった。試合結果としては妥当だと思う」
ワルテル・マッツァーリ(インテル監督)
「せっかく先制しながら、その後にペースを落としてベローナに反撃を食らった。そのような“時間的な空白”を作ってはならず、チームには改善の余地がある。ただ相手も素晴らしいチームであり、ホームでもアウェイでも変わらずに攻撃ができた点は評価したい。毎試合こうあるべきだ」