試合終了の笛とともに見せたケラー監督の大きなガッツポーズが、この勝利の大きさを物語っていた。6位と5位の対戦となったシャルケ対ボルフスブルクの試合は2-1でシャルケに軍配。2連勝で7位から4位まで順位を上げたシャルケは再び上位戦線へ。一方、ボルフスブルクは2連敗で上位争いから一歩後退する結果となった。
試合を動かしたのは、本職ではないポジションで起用されたこともあってゲームから消えている時間が長かった2人のボランチ、シャルケのプリンス・ボアテンクとボルフスブルクのアーノルドだった。
まずはP.ボアテンク。8分、CKの流れから放ったボレーシュートはGKにセーブされたが、直後のCKで倒れ込みながら頭で合わせたボールが味方のフェリペ・サンターナに当たってゴール。得点者はF.サンターナだが、P.ボアテンクの粘りが生んだ得点だった。
先制を許したボルフスブルクは積極的になり、何度かの決定機を作り出した。しかし、その中でアーノルドはまったくプレーに絡むことができず、前半のプレーへの関与回数は両チーム通じて最低の13回。試合全体で見ても関与回数はチームの先発メンバーの中で下から3番目に少なかった(彼を下回ったのは50分に退場となったカリジウリと59分に交代したオリッチだけ)。だが、決定的な仕事をしたのはアーノルドだった。65分、左サイドを突破したペリシッチのシュートをGKが弾くと、こぼれ球をアーノルドが押し込んで1人少ないボルフスブルクが同点に追いついた。
ボルフスブルクに押される展開の中で、先制点に関与したP.ボアテンクもその後はなかなか試合に入り込むことができていなかった。それは数字上にも表れており、ボランチコンビを組むノイシュテッターのプレーへの関与回数がチーム最多だったのに対し、P.ボアテンクのそれはチームの先発メンバーの中で下から3番目だった。
ただその一方で、P.ボアテンクはチームで最も多くのシュートを放ってもいる。そしてそれは、アーノルドも同じだった。彼らはともに、チャンスの場面にはしっかりと顔を出していたのだ。
そして、最後に再びP.ボアテンクが決定的な役割を果たす。試合時間も残り10分を切ったところで、ノイシュテッターがワンツーでマークを外しシュートレンジに入る。ボルフスブルクの両CBが慌てて体を寄せてきたところで、中央で待ち構えていたP.ボアテンクへとスルーパスを通す。ガーナ代表MFは冷静にゴール右隅へ流し込み、これが決勝点となった。
シャルケはこれからの1カ月の間にレバークーゼン、レアル・マドリー(CL)、そしてバイエルンと厳しい戦いが控えている。その最初の難敵ボルフスブルクに競り勝ったことは小さくない意味を持つはずだ。
(文/山口裕平)
<監督コメント>
イェンス・ケラー(シャルケ)
「我われはうまく試合に入り、主導権を握ることができた。早い時間に先制して、前半は相手にチャンスを与えなかった。後半はとにかく守備をコンパクトに保った。相手の退場で我われはギアを1段下げたが、ボルフスブルクは上げてきた。同点とされた後、我われは勝利への強い意志を見せられた。攻撃的にプレーし、さらなるチャンスもあった」
ディーター・ヘッキング(ボルフスブルク)
「この試合は5位と6位のチームによる、期待通りの激しい試合になった。我われはうまく試合に入ることができず、失点を喫してからは立て直すのに時間がかかってしまった。後半に入ると1対1で上回りボールを支配することができたが、退場者が出てしまった。その後、チームの能力を示すことができ同点に追いついたが、終盤は劣勢の中で多くを望み過ぎた」