カンプノウから貴重なアウェイゴールを持ち帰ることに成功したアトレティコ・マドリーだが、ビジャレアルをホームに迎えた直後の国内リーグでは厳しい連戦で溜め込んだ疲労の色が濃く、セットプレーから決めた一発をかろうじて守り切る薄氷の勝利に終わった。
対するバルセロナも最下位ベティスとのホームゲームで大苦戦。PK2本と相手DFのオウンゴールでの3ゴールという煮え切らない勝利ながら、マルティーノは「今日は結果に100%満足」と開き直りに近いコメントを発していた。
試合前から悲壮感を漂わせる両チームがぎりぎりの状態で迎えるこの第2レグ。どちらが勝ち上がるにせよ、高い代償を伴うことは避けられなさそうだ。
アトレティコは第1レグで負傷交代したジエゴ・コスタの回復が間に合わない可能性が高い。前日会見でその点を問われたシメオネは、大胆にもD.コスタの代役としてアドリアンの先発起用を明言した。だが1シーズン以上もスランプが続いている彼は昨年11月26日のゼニト戦で今季2点目を決めて以降、ゴールどころか出場機会すらろくに得られていない。そんな選手の先発起用をするという指揮官の賭けがどちらに転ぶのかは興味深いところだ。
なおシメオネはアドリアンとともにビージャの先発起用も明言。そのため出場停止明けのラウール・ガルシアは欠場が確定したアルダの代わりにサイドMFとして先発することになる。
一方のマルティーノは月曜の練習で、第1レグとメンバーは同じながらメッシを右、ネイマールを左、セスクをCF、イニエスタを左インサイドMFに配置する布陣をテストした。それは過去4度のアトレティコ戦と同じく、第1レグでは中央のプレースペースを消されたメッシがほとんどボールに触れられなかったからだろう。またこの配置ならば左での起用が最も生きるネイマールとイニエスタを共存させられる利点もある。
しかし、今季これまでこの並びでプレーしたのは昨年10月のクラシコしかない。そのクラシコではネイマールが1ゴール1アシストと決定的な役割を果たした反面、右サイドのメッシは孤立しがちでプレーへの関与が少なかった。しかもメッシの右ウイング起用は守備時に右SBのダニエウ・アウベスを孤立させるリスクを伴うことになる。
バルセロナがメッシを消された過去4戦で手にしたゴールはわずか2つ。それも先制された後の同点弾で、まだ一度もリードしたことがないだけに、指揮官が何か変化を加える必要性を感じたとしても不思議ではない。それにマルティーノの言う通り、もしバルセロナがリードすればこれまでとは異なる展開になる可能性がある。D.コスタを欠く可能性が高いアトレティコは専守防衛に徹すると見られるだけに、今季5度目の対戦にして初めてスコアの均衡が破れるかどうかはバルセロナが先制するかが鍵となるだろう。
(文/工藤 拓)
<監督コメント>
ディエゴ・シメオネ(アトレティコ・マドリー)
「ジエゴ・コスタが無理ならば明日はアドリアンがプレーする。彼は必ず素晴らしい試合をしてくれるはずだ。チームは少なくとも90%以上の状態にある選手を必要としている。D.コスタもゴディンもミランダも、50%の状態では役に立たない。アドリアンは良い状態にある。彼は就任1年目のシーズンに多くをもたらしてくれた。明日は必ずゴールを決めてくれるはずだ」
ヘラルド・マルティーノ(バルセロナ)
「これまでの対戦で唯一足りなかったのはスコアで相手をリードすること。これまでとは違った形で試合をコントロールできるよう、先制点を狙っていきたい。(アトレティコとの)過去4戦はどれも似たような展開で、いずれも後半は我われが上回っていた。だが我われが目指すべきは前回対戦のラスト30分のようなプレーだ。もし相手を上回る時間帯にゴールを決めることができれば、これまでとは異なる試合になる可能性がある」