オリンピアコスのミチェル監督は、プレミアリーグで苦戦が続くマンチェスター・ユナイテッドとの試合に向けて自信を見せている。オリンピアコスが現在のユナイテッドにとって、決して与(くみ)しやすい相手でないことは確かだ。
レアル・マドリーのレジェンドが率いるオリンピアコスは[4-2-3-1]を基調としたタイトな守備と鮮やかなサイド攻撃、鋭いフィニッシュでグループステージに驚きをもたらした。冬にエースFWミトログルがフルアムへ移籍したものの、パラグアイ代表ウイングのエルナン・ペレス(←ビジャレアル)とストライカーのネルソン・バルデス(←アルジャジーラ)を獲得。また、膝の負傷で長期離脱となった守備の要シオバスの代役候補として、スペイン人DFマルカーノをルビン・カザンから復帰させた。
昨年11月から負け知らずとチームのコンディションは上々の様子。首位を独走するリーグ戦では主力の大半を休ませ、万全の態勢で第1レグに臨む。
ユナイテッドにとって、注意すべきはシンプルで素早い展開からのウイングの仕掛けだ。モイーズ監督はサイド攻撃を頼りにするため、守備時に両SBが孤立するケースが多い上に、どちらかのSBが上がった状態で攻から守に切り替わった時、後ろは3枚で対応することになるが、その際、最終ラインはサイドのスペースを突くMFキャンベルの高速ドリブルやフステルのアーリークロスの脅威にさらされる。エバンズとフィル・ジョーンズを負傷で欠く状況で、ベテランのファーディナンドとビディッチのCBコンビが守り切れるかは勝負のポイントとなる。
また、最近になって批判が強まるセントラルMFの守備も、オリンピアコスにワイドな仕掛けの起点を作らせないためには重要だ。
攻撃ではバレンシアやヤヌザイのクロスに強力2トップが合わせる形がユナイテッドの王道パターンだが、クロスに滅法強いオリンピアコスの守備陣に対し、ごり押しでは苦しい。その意味でも、GSでは5試合に出場している香川にアクセントとしての働きを期待したいところ。オリンピアコスの右SBトロシディスが1対1の守備に強い選手であることを考えても、左サイドMFにはヤヌザイより周囲との連係の中で多彩な攻めのパターンを作れる香川が入った方が相手にとって危険と筆者は見るが、モイーズ監督の選択に注目したい。
敵地ながらボールを持つ時間が長くなると予想されるユナイテッド。しっかりゲームをコントロールしながらアウェイゴールを奪う、という理想的な試合運びができるだろうか。
(文/河治良幸)
<監督コメント>
ミチェル(オリンピアコス)
「このステージまで来られたことを本当にうれしく思う。試合が待ち切れないね。ユナイテッドを破るために全力を尽くす用意はできている。経験値の差はあっても、その不足を克服するだけの力を我われのチームは持っている。ここにたどり着くまでに示してきた情熱が、彼らに問題を引き起こすはずだ。我われの状態は2カ月前より良くなっている。ここまでずっとハードワークを重ね、しっかりと準備をしてきたからね」
デイビッド・モイーズ(マンチェスターU)
「私はチャンピオンズリーグを心から楽しんでいる。(再開を)すごく待ちわびているよ。オリンピアコス戦はタフな試合になるだろう。彼らは厳しいグループでパリSGとベンフィカに対してよく戦い、勝ち進んできたのだから。我われは質の高いプレーをする必要がある。ルーニーとファン・ペルシーは非常に良い状態にあるし、2人とも大舞台で得点を決めることができる。彼らがそろうことはチームにとってとても重要なんだ」