昨年末から現在まで、サンクトペテルブルクでは40年ぶりの記録的な暖冬が続いている。通常この時期にゼニトと対戦する場合、相手チームにとって過酷な寒さも脅威となるが、今回はその心配はなさそうだ。
とはいえ、本拠ペトロフスキでのゼニトは今季CLではいまだ無敗(予選を含め2勝3分)を続けている。大方の予想では圧倒的優位に立っているドルトムントであっても、ロシアでの第1レグが容易なものでないことは間違いない。
ゼニトは右SBアンサルディ、前線のダニーとシロコフが負傷により欠場が濃厚な上、CFケルザコフも練習中に背中を痛め出場が微妙な状況だ。しかし、代役の駒はそろっているため[4-2-1-3]の布陣に変更はない。自国リーグの冬期中断により2カ月以上公式戦から離れているため、試合勘とフィジカルコンディションが懸念材料となるが、この毎度の課題を克服できるかがポイントとなる。
対するドルトムントは主力に故障が相次ぎ、先週末のリーグ戦では最下位ハンブルク相手に0-3で完敗。復帰したばかりのMFシュベン・ベンダーが再離脱し、エースのレバンドフスキも風邪により体調が万全とは言えずチーム状態は下降気味となれば、ゼニトにも付け入る隙は十分にある。
ゼニトにとって、相手のシュートをある程度浴びることは想定内。それでもリスク覚悟で中盤からプレス勝負を挑むだろう。それは武器である前線の「フッキ、アルシャビン、シャトフ、ケルザコフ(またはロンドン)」のユニットを最大限に生かすためだ。ボール奪取後にすばやく攻撃の鍵を握るフッキにパスを通すことができれば、シュートまで持ち込める可能性は高い。あるいは、相手のフッキへの警戒心を利用してアルシャビンやロンドンがエリア内でボールを受けることもできる。今冬の移籍市場でルビン・カザンから獲得した“秘密兵器”ロンドンを起用し前線に高さをもたらすことができれば、ロングボール主体の攻撃というバリエーションも考えられる。
ドルトムントの代名詞である“ゲーゲンプレッシング”と強力なカウンターに対してギリギリの対応を迫られる守備陣の負担を、大会屈指のタレントの一人であるフッキを中心とした前線のユニットがどれだけ軽減させることができるかが見どころだ。
(文/篠崎直也)
<監督コメント>
ルチャーノ・スパレッティ(ゼニト)
「我われは一歩一歩成長するために努力を続けてきた。クラブの上層部はとても野心的で、高い目標を掲げ、その責任をチームに課している。選手たちには“ゼニトの歴史に自分たちの名前を刻む可能性が目の前にある”と話した。我われは今大会で最も手ごわいチームの一つと対戦する。ドルトムントのレベルに100%対抗できるかわからないが、できることはすべてやってきたよ」
ユルゲン・クロップ(ドルトムント)
「冬期キャンプ中のゼニトの試合はすべてチェックした。もちろんフッキに最大限の注意を払わなければならない。彼は調子が良ければ得点を量産できる。ロシアのサッカーは急速に進化している。彼らが決勝ラウンドに進むのは2度目であり、過去には欧州の舞台でバイエルンやレバークーゼンに勝ったことをよく覚えているよ」