中盤のパスワークを駆使した攻撃的なチームの激突だが、ボールポゼッションではバイエルンが上回る。グループステージにおけるボール支配率はアーセナルの54%に対し、バイエルンは9%も高い63%を記録した。
これまでの戦いから判断すれば、アーセナルが劣勢を強いられる可能性は高いだろう。バイエルン相手でも、特にホームで戦うこの第1レグは50%近いポゼッションを維持しチャンスを物にして、アドバンテージを持って敵地での第2レグに持ち込みたいころだ。
主導権争いのカギを握るのは、両チームの中盤のトライアングル。アーセナルは[4-2-3-1]の正三角形、バイエルンは[4-1-4-1]の逆三角形のため完全にかみ合う。アーセナルは主力のアルテタが出場停止のため、フラミニとウィルシャーがボランチでコンビを組み、トップ下にエジルが構える布陣を予想する。対するバイエルンはラームをアンカーとして、インサイドハーフにクロースとチアゴ・アルカンタラを並べるはず。
ポイントは攻撃側に立った方が、いかに相手の厳しいチェックを外してパスを繋ぎ、ボールを失わずに高い位置で崩しの起点を作っていけるか。アーセナルとしてはウィルシャーとエジルの縦ラインをメインのパスルートとしながら左ウイングのカソルラに展開し、ラームがボールサイドにスライドしたタイミングでエジルにリターンする、といった形でワイドなパスを織り交ぜながらバイエルンのプレスを揺さぶり、中央のパスコースを開きたい。
ただ、バイエルンもコンパクトな関係を維持しながら、中盤のトライアングルに加えて左右のウイングとSBが中盤に顔を出し、ピッチ中央の密度を高めてくる。その状況で無理に縦を狙うと中途半端なところでパスをカットされたり、あるいはトラップ際に寄せられてボールを失うリスクがある。
そこで中央のトライアングルでのボール回しに固執するのはバイエルンの思う壺だ。エジルからバックパスを受けたフラミニが中盤の高さに上がったSBのサニャに展開するなど、ピッチをワイドに使った繋ぎでバイエルンのプレスをいなし、スペースが生じたエリアで縦パスを突き前進していくようにしたい。
■死守したい支配率45%
守備に関して、アーセナルはバイエルン同様プレッシングを用いるが、エジルがラームをチェックし、2人のボランチはフラミニがなるべく後方に立ちウィルシャーをカバーする形を作って裏を通させないようにしたい。そうして中盤でボールを運ぶことが難しくなれば、バイエルンもラームを起点にワイドな展開を織り交ぜてくるが、外はサイドMFとSBに任せて、中盤の3人はバイエルンのトライアングルから目を離さないことが重要だ。
グアルディオラが率いるバイエルンはポゼッションを高めながら、相手の守備を動かして自分たちの決定的なパスルートを作ることに長けている。アーセナルはフラミニが縦パスに対するフィルター役であり続けることで、最も危険なCBの手前で起点を作らせることなく、ボールを奪うチャンスを狙っていくことができる。
こうした戦い方が成功しても、アーセナルのボール支配率が50%を切ることは濃厚だが、大事なのはマイボールの時に自分たちのスタイルで攻めること。それが可能なギリギリのラインは45%と見ている。選手たちは数字を見ながらプレーするわけではないが、観戦する側としては一つのバロメータとして、気にしながら試合を見ると面白いだろう。
(文/河治良幸)
<監督コメント>
アルセーヌ・ベンゲル(アーセナル)
「(同じくバイエルンと対戦した)1年前(の試合前)に比べ、我われは精神的に非常に良い状態にある。今回は(FAカップ5回戦で)リバプールを下し、この試合にも勝利すると決意している。バイエルンは世界一のチームか? 今、そうでないと言うことは難しい。彼らはすべての試合で勝利している。FCWCとCLを制したんだ。『イエス』と言う以外にない」
ジョセップ・グアルディオラ(バイエルン)
「私にとって、アーセナルと対戦するためにここ(ロンドン)に来るのは3度目だが、まだ一度も勝ったことがないんだ。アーセナル相手に90分間試合を支配するのは不可能。相手にボールを渡してしまえば、苦しくなるはずだ」