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名波浩が語る、チャンピオンズリーグの凄さ

2013.02.15

いよいよ12日から始まる欧州最高峰の戦い、12-13チャンピオンズリーグ(CL)の決勝ラウンド。そのピッチ上では実際、何が行われているのか? 大会の行方や試合の展望とともに、超一流のプレーの見方を元日本代表の10番、名波浩氏に解説してもらった。(2013年2月15日掲載)

印象的だったドルトムント

「今の戦い方に相当の自信を持っている」

――CLの決勝ラウンドが、間もなく始まります。グループステージ(GS)を振り返って、名波さんの印象に残ったチームや選手は?

 「スカパー!の中継で僕の担当はグループDだったんですが、ドルトムントが1位抜けするのは最初の2試合を見てなんとなく感じましたね。彼らの何がいいかと言うと、(GSで敗退した)昨季の悔しさを選手たち自身が噛みしめていることが伝わってきたことです。どのレベルのクラブが相手でも同じスタンスでプレーしていこう、というその組織力に、昨シーズンよりさらに上積みがあったかなと」

――1年前とどんな点が変わったのでしょう?

 「前回はCLという大会、そしてアーセナルといった対戦相手に名前負けしたところがありましたが、今回はレアル・マドリー、マンチェスター・シティ、アヤックスと各国王者がそろったグループで、より名前負けする要素がたくさんあったにもかかわらず、圧倒できましたよね。負け試合がない(4勝2分)というのもそうだし、引き分けの試合も自分たちが主導権を握っていたので、今の戦い方に相当自信を持っていると感じました」

――名波さんから見たドルトムントの特徴とは?

 「バルセロナ同様、高い位置からボールを奪いに行くというチームとしての連動性は本当に素晴らしいし、その連動性が生み出す選手間のコミュニケーション、距離感が破たんすることがない。だから大崩れすることはもちろんないだろうし、先に主導権を握ってゲームをコントロールしようという意識も昨季より増えたんじゃないかと思います」

――ドルトムントはラウンド16でシャフタールと当たります。

 「シャフタールは勢いがあり、ブラジル人を中心に攻撃の速さと巧さを兼ね備えた素晴らしいチームだと思います。最終的にはユベントスにグループ首位の座を奪われましたが、序盤3試合の勢いは凄かったです。近年CLで台風の目となっているクラブなので、ドルトムントにとっては非常にやりづらい相手ですよね。ただ、(準々決勝まで勝ち残れば)次のドローによってはドルトムントがファイナルまで行く雰囲気もあるかなと思うんですよね」

レアル・マドリー相手に1勝1分

「速攻を怖がって出て行けなかった」

――Rマドリー相手にあれだけ戦えるとは、ちょっと驚きでしたね。

 「(ドルトムントのホームでの第3節は)Rマドリーがちょっと悪過ぎたのもあったけど、でも2戦目(第4節)はRマドリーもそう悪くなかったのに、ドルトムントの組織力に手こずっていましたよね。個で打開できなかったら2、3人が関わって崩さなきゃいけないんですが、ドルトムントはボールを奪った後の速攻があるので、それを怖がってなかなか出て行けなかったですね」

――現在の欧州サッカーではバルセロナとRマドリーが頭一つ抜けた強さだと言われていますが、その一角のチーム相手にあれだけ撃ち合って戦えるというのは凄いですよね。

 「相当自信を持ったと思います。Rマドリーはしょっぱなにドルトムントに負けたので、その時点で彼らとしては2位狙いにするしかなかったこともあるんでしょうけど。前へ前へという推進力と、いなしからフィニッシュまでの形、あとはカウンターがうまいRマドリーにボールを奪われない。局所局所での約束事を純粋にこなしていくと、こういうゲームになるんだなと」

――香川がいた時との違いは感じましたか?

 「香川がいた時は、あまりポジションチェンジが行われていなかったんですよね。香川と前線の選手というゴール前での連動はあったかもしれませんが。ボックス前のバイタルエリアを使う選手と、それから外で引っ張る選手と、なんとなく決まりがありましたが、今はちょっと自由になってきた感じがします」

――香川が抜けた直後はフィットしていない感じでしたが、良くなってきましたね。

 「ゲッツェとロイスが自由にポジションチェンジを繰り返して、レバンドフスキの背後とか横にくっつく動きとか。ああいう約束事ってのはなんとなく、お互いの阿吽(あうん)の呼吸で、いいところにいるね、ということが多かったですよね」

――ドルトムントの注目選手は?

 「CBのフンメルス。足下が巧いですし、相手選手を潰しに左サイドに出て行く時、コンビを組むCBが感じてなかったら行かない、感じていたら行く、そして相手を潰すかボールを奪うか、そういった判断が非常にスムーズですよね。コンマ何秒で、1秒かからずにそういった判断ができる。それが、相手に危険なエリアまで入られていない理由だと思います」

奥が深い超一流の技術

「メッシとロナウドのドリブルは対照的」

――ロナウドやメッシといったスーパーな選手とピッチで相対したとしたら、どう対処しますか?

 「やはり1人では簡単に離されるから、2人目、3人目の判断を速くしなければならないですよね。かといってその局所だけで対応しようとすると、ポンと一つ飛ばされて、慌てて密集した人間が釣られて動いたりすると、逆に本人が空いちゃったりする。そういう状況をうまく対処しながら、自分は消えたり出てきたりを繰り返す必要がありますよね。どちらの選手もスピードがあり、ドリブルのタッチ数が違うくらいでゴールへの執着心も非常に高いし、すべてのシュートシーンで巧さが出ています。まあ、抑えるのはなかなか難しい選手たちですよね」

――世界トップクラスの選手はそんなに違うものでしょうか?

 「ちょっと違いますよね。メッシは特に」

――わかっていても止められない?

 「止められないっていうか、潰せないですからね。クラッシャーは自分ごと相手をクラッシュさせることを狙うんですが、メッシは相手が来るタイミングをわかっていて、抜く時のスピードも速いので飛び込んでも簡単にかわされてしまいます。ボールが足下から80cmくらいしか離れないですからね。タッチが細かいからいろんな局面、その時の状況によって選択肢を変えられます。一方、ロナウドの場合は、自分のスピードをフルに生かすために150cmくらい離します。ロナウドはボールを出した時が前に行く時で、行かない時はボールは足下に止まっていますから、2人のドリブルはそこが対照的ですね」

――ではロナウドの特徴は?

 「先ほど言ったように、自分のスピードをフルに生かす球足の長いドリブルと、シュートの意識が高いので無理な体勢からシュートしてもしっかりミートすればブレ球を蹴れること、そしてFKの射程距離。このFKの距離はメッシとは圧倒的に違いますよね」

――名波さんがお薦めする選手は?

 「(ドルトムントの)ゲッツェ、ロイスはいいですね。あとマドリーのエジル。縦への速さと幅を使ってくるチームなので、リズムを変えられる、この選手を経由すると何かが起きる、と感じさせてくれます」

――名波さんはやはりご自身と同じ中盤の選手が気になるのでしょうか?

 「そうですね。だからマンチェスターUならキャリックとか」

身近になったチャンピオンズリーグ

「マンチェスターUに日本人がいるなんて夢の世界のお話」

――そのマンチェスターUに香川が加入し、シャルケには内田がいます。CLの舞台で日本人がプレーするなんて凄い時代になりましたね

 「もうスタンダードになったでしょう。(10-11シーズンに)内田のシャルケがベスト4、長友のインテルはベスト8に行きましたし。『CL』というフレーズが日本人にスッと入ってくるようになったのは、やっぱり日本人選手が活躍し出してからだと思います。パク・チソンのようにアジアでは毎回のように上位に顔を出していた選手もいますし、もうそんなに驚きではないですよね。今季で言えば、長友も(CSKAモスクワの)本田も出たかったと思っているでしょうし。彼らのように、国内リーグ戦の結果でCLに出られなかったという、日本人のいるチームがいくつもあるわけですから」

――香川のマンチェスターUでの1年目はどう見られていますか?

 「加入1年目から大活躍したドルトムント時代があるので、本人はもしかしたら不満に感じているかもしれませんが、ビッグクラブでのスタートという意味ではちゃんとチームの一員になっていると思います」

――日本からも世界からも注目されるクラブでプレーするという、とんでもない重圧もあるでしょうね。

 「あと、自分の好きなポジション(トップ下)をやれていないので、そこがうまくハマるようになれば違ってくるでしょうし。今やっている左サイドでストレスを感じたままやっているようなら、ライバルの多いチームですから彼らに試合で違う味を出されてしまうと、どんどん出場する機会も少なくなるかもしれません。でも、これは彼が決めた挑戦。我われからしたらマンチェスターUに日本人がいるなんて夢の世界のお話で、まさかこんなに早くそんな選手が出てくるとは思っていませんでした。成功、失敗は置いておいて、試合に出続けてほしいですね」

注目の大一番、Rマドリー対マンチェスターU

「180分トータルで3点入るかどうか」

――そのマンチェスターUはいきなりラウンド16でRマドリーと対戦します。

 「昨季(GS敗退という)悔しい思いをしたマンチェスターUですが、今季はグループの相手に恵まれながらもいくつか危なっかしい試合があって2敗しましたよね。(すでに首位突破を決めた後で)メンバーを落とした影響があったのかもしれませんが、2敗するようなグループではないと思うからすんなり勝ってほしかったです。まあ、そのおかげでガラタサライとCFRクルージュの間で2位争いが接戦になったわけですが」

――この試合の見どころは? 超名門対決ですが。

 「Rマドリーは世界的にメジャーな選手を集めていて、マンチェスターUはファーガソン監督の目に適った選手だけがいる、というイメージ。力関係では、Rマドリーの方が上だと思います。マンチェスターUは堅守速攻で勝ってきたチームですが、今季はリーグ戦を見ても失点が多い。まあ、Rマドリーも失点は多いんですが」

――今季はモウリーニョも、カシージャスやセルヒオ・ラモスといった主力選手との関係がうまくいっていないようですね。あれだけ求心力のあった指揮官が今、難しい状況になってしまっている。ピッチ外の影響も心配です。

 「そういうオフ・ザ・ピッチでのことも、チームマネージメントにとって重要であることは選手もスタッフもわかっていると思います。一つの綻びからガタッと崩れ落ちることがありますが、逆に言うと、こういう強豪相手に勝てば、兜の緒が締まる可能性はありますよね。マンチェスターUの方は、(自国の)ウェンブリーで決勝が行われので、どうしても残りたいでしょう」

――香川が出るとしたら左サイドでしょうか?

 「今のままならそうでしょうね」

――ルーニーがトップ下、そしてファン・ペルシーは絶対外せないでしょうからね。

 「2トップ気味にやる感じの、ルーニーとの最前線って感じでしょうね」

――Rマドリーのサイドはディ・マリアかロナウドです。

 「サイドは相当引っ張られるだろうから、(SBの)エブラとラファエウが前に出て行く回数もいつもより減るでしょう。(ボランチの)キャリックとクレバリーは、エジルたちにできるだけスペースを使わせず、シャビ・アロンソの得意な大きな展開をさせないようにして、ちょいちょい出てくるケディラの飛び出しも警戒しなければなりません」

――Rマドリーの面子は凄いですからね。

 「凄いです。ただ、それを有効に使えているかどうかは別の話ですが」

――マンチェスターUが押される展開になりそうでしょうか?

 「カウンター狙いになるでしょうね。(第1レグ、第2レグを合計した)180分トータルで両チーム合わせて3点入るかどうか。リスペクトしている者同士なので、相当慎重に行くと思います」

シャビ・アロンソのパスの秘密

「選手を見るのでなく流れを読む」

――試合のキーマンの一人、シャビ・アロンソについてもお聞きします。プレーヤー目線で見ると、彼はどんな面が優れているのでしょうか?

 「相手の背後に落としたり味方の足下にピタッとしたパスを出せるのは、キックの瞬間にいいインパクトをボールに伝えているからです。また、視野の広さがあるから、そういうポイントが見えるんですよね」

――名パサーだった名波さんにうかがいたいのですが、平面のピッチにいてシャビ・アロンソのように、ダイレクトで50mのサイドチェンジを出せるのはどういう原理なんでしょうか?

 「展開を予測して、“このへんが空いているな”というイメージができていれば、つまり選手を見るのでなく流れを読んでいれば、空いている空間に落とすことはできます。もちろん味方とのコミュニケーションも大切です」

――まったく見ないで予測で出したりもするんですか?

 「それは本当にたまにですね。大体はどこかで必ず見ています。来たボールをコントロールしてから顔を上げて出す時もありますし、パスを受ける間際に相手を見ておいて、来たボールをダイレクトで出すこともあります。どのタイミングでアイコンタクトを取っているかどうかは一概に言えないですけど、シャビ・アロンソの場合は間接視野の広さもあるでしょうね。そうでないと、ダイレクトで50mのサイドチェンジはできない。ダイレクトのパスは意思疎通が難しくて、例えば逆サイドに振る時に受け手がサイドに張っているのではなく、中に入って受けたいかもしれない。だから、ちゃんと出す前にサイドにいるのを確認しておくか、相手に『そこにいろ』と伝えているかです」

――名波さんから見て、凄いパスセンスを持っている選手は?

 「(ユベントスの)ピルロは素晴らしいと思います」

バルセロナ相手には、ミラニスタといえど…

「守備に回る時間が長くなると厳しくなる」

――バルセロナを倒せそうなチームはありますか?

 「GSでセルティックに負けましたが、あれは相手GKが当たりまくっていましたからね。やっぱりRマドリーかマンチェスターUか、パリ・サンジェルマンか。パリSGは戦術がまだあまり確立されていないんですが、補強がはまれば行っちゃう可能性はありますよね」

――イブラヒモビッチも点を取りまくっていますね。来たボールを全部決めてしまうような、規格外な彼みたいな選手はどう思われますか?

 「ゴール前で待っていて、俺に出せ、俺に任せとけ、という印象を持たれがちですが、しっかり周りの選手を見て、自分のポストプレーから彼らに出す姿勢を見せていますよね。僕はミラニスタなのでミランの試合を結構見ていたんですけど、サッカーインテリジェンスが凄く高い選手ですよ。やっぱりそれがなければこんなに点を取れないと思いますし。味方からいいクロスが来なかった時に天を仰いでいるようなイメージがあるから、“俺様タイプ”に見えるのかもしれませんが、意外にそうじゃない。多少パスがずれても身体能力の高さでシュートまで持っていきますし、ヘディングも規格外ですし、体のありとあらゆるところを使ってボールをゴールに押し込もうというあの気迫、負けん気の強さは素晴らしいです。まあ、パリSGはロナウジーニョ(01-03)やレオナルド(96-97)がプレーしていた時は華麗さを求めるチームでしたが、イブラヒモビッチたちが入ってきたことで戦う集団に変わってきたと思います」

――ミラニスタだそうですが、ミランとバルセロナの試合はどうですか?

 「これはバルサが勝つでしょう。ただ、バルサはミランに対して勝敗での相性は悪くありませんが、結構点を取られていますよね」

――昨季は(GSと準々決勝で)4回当たりましたが、その時もいい試合でした。

 「今ミランはCFが決まっていないので、そのあたりがどうなるか。(マンチェスターCから移籍してきた)バロテッリも出られないですからね(※マンチェスターCで今季CLに出場したため)。彼がいればより面白いと思いましたけど、でもバルサにボールを回されながらも、エル・シャラウィとか帰ってきたプリンス・ボアテンクがうまくはまれば。ただ、ボランチとか本当にドタバタしているから、ボールを奪った後で前線にちゃんとパスを出せるかですね。もしロビーニョたちを無駄に走らせることになってしまうと、世界的に有名な選手はストレスがどんどん溜まっていっちゃうんで。守備に回る時間が長くなると厳しくなるでしょう。そこはセルティックやチェルシーみたいに、バルサ相手には守る、と決めてしまえばいいのかもしれません。バルサから見て相性の良くないチェルシーはそこがしっかりできています」

――やはりバルセロナに対抗できるとしたらRマドリーでしょうか?

 「ドルトムントにも頑張ってほしいですね。サッカーの質としては、この16チームの中でトップ3に入るので」

バルセロナの強さの理由

「組織でも個でも緩急自在」

――バルセロナの凄さとは?

 「パスの出しどころがたくさんあって、受けどころがたくさんある。イコール、選手たちの立ち位置が少しずつ変化しているから相手はつかまえにくいし、前に仕掛けると見せかけてブロックを作らせてから、もう一度組み立て直すとか、やり直すと見せかけて一気にスピードを上げるとか。それが組織でもできるし、個でもできることです」

――名波さんの理想のサッカーに近いですか?

 「そうですね。ダイレクトプレーも多いですし。負けたセルティック戦で、2-0から1点返したメッシのゴールなんか、ダイレクト、ダイレクト、ダイレクトで。最後はペドロのシュートをGKが弾いたところをメッシが決めましたけど、彼は最初少し下がってサボっているんですよね。ダイレクトプレーに関わる気はまったくなくて。ボールをダニエウ・アウベスが持ってもう一回、ってなった時に、メッシは右サイドに開いてボール受けるとそこで仕掛けて、そこにアウベスが待ってっていう感じでイメージしていたんです。そしてペドロに入る一つ前のプレーくらいから、シュートかな、とスルスルっと前に入ってきてGKの弾いたボールが自分の前にこぼれてくる。ここがもう計算ですよね、完全に」

――常に前へ前へ、ではないと。

 「そう。いつもトップスピードのイメージがありますけど、実際はそんなことないです。セスクも同じです。その強弱の巧いのがバルサですよね。止まれるし、やり直しができる」

――バックパスも多いですけど、悪くないバックパスですよね。

 「横へのいなしや、後ろへ下げた選択というのが、チームにとってもう一度やり直せるとか、もう一度スペースを空けるためといったメッセージが含まれています」

15季連続のアーセナル vs 昨季準優勝バイエルン

「ファン・ペルシーが抜けた穴は相当でかい」

――アーセナル対バイエルンはどうですか?

 「アーセナルは02年くらいまでのアンリやベルカンプ、ビエラが良かった頃に比べると下降気味ですが、それでも彼らの凄いところは、毎年のように選手の入れ替えがあっても変わらずCL本大会に出場していることですよね。15シーズン連続ですから、本当に大したものだと思います」

――今季もカソルラが加わった一方で、ファン・ペルシーが抜けました。

 「カソルラ、いいですよね。巧いし速いし。ちょっと一人よがりなところはありますけど、プレミアのサッカーを覚えてしまえば、もっとテンポは良くなると思います。ポドルスキは“要る?”と思いましたけど、インパクトはありましたね。でもファン・ペルシーが抜けた穴は相当でかい」

――ウォルコットをCFで使っていますよね。

 「本人もCFをやりたかったんですってね」

――アーセナルってウイングをCFにしますよね。

 「いずれ宮市も可能性あるのかな」

――バイエルンについては? 来季からはグアルディオラ監督が就任することが決まりました。

 「昨季もファイナルまで行って、今季もGSは順調に行った感じですね。アタッカー陣も充実しているし、今季はハビ・マルティネスが入ってテンポも変えられるようになったし、怖いのはCBくらいですかね」

侮れないダークホース

「バレンシアやセルティックにもチャンスはある」

――他に注目しているカードは?

 「バレンシア対パリSGも面白いと思いますね。バレンシアは攻撃的ですし、選手が何人抜けてもある程度の成績を残しているのは、それなりにクオリティの高い選手をうまく補強してチームをレベルアップさせているから。スペインの象徴的なクラブだと思うので、パリSGが食われる可能性も十分あります。あと、セルティック対ユベントス。セルティックのホームはこの16チームの中でも相当異様な雰囲気のあるスタジアムなので、ユベントスも手こずるでしょう。ただ、イタリアは引き分ける文化が思いっ切り浸透している国で、ユベントスは特にそれが巧いチーム。彼らが引き分けを上手に使って180分トータルで試合を組み立ててくると、セルティックはちょっと厳しいかもしれません。でもユベントスが最初からガツガツ仕掛けてきてくれれば、チャンスはあると思いますね」

――ユベントスも含めイタリアのクラブは最近3バックが多く、ヨーロッパの中では少し変わった戦い方をしています。

 「2列目の左サイドのアサモアと右のリヒトシュタイナー、この2人が頻繁に上下動することによって、配給役のピルロが彼らの空けたスペースを活用しているし、そのボールを2トップに流すのか、2列目のマルキージオをスペースに飛び出させるのか。そういった、人が走る距離をボールで有効に使っていますよね」

――システマティックにやっています。

 「そこが今までのユベントスとは違います。ピルロが加入した昨季から、そういうやり方を構築してきました。昔は2トップに強い選手を置いて、縦に速い感じでしたから。今はその2トップに(身長164cmの)ジョビンコがいたりして、ボールの収まりと、反転した後のイマジネーションで崩してくる。ただ、セルティックもメッシ対策でそこは慣れた部分があるでしょうから、結構面白いカードだと思いますよ」

――ガラタサライと対戦する、シャルケはどうですか?

 「内田はチームに信頼されていますよね。日本人サポーターとしてうれしいです。試合に出続けて、CLを常に肌で感じていますし、昨季はチームが出場権を逃しましたけど、一昨季はベスト4。(右サイドMFの)ファルファンとの連係も構築されていて、いいですね」

――ドイツ勢は今回3チームともGS1位突破です。

 「ドルトムントの1位は凄いと思いますね。Rマドリー、マンチェスターC、アヤックスと同組でしたから。アヤックスもいいサッカーをしていました。チームとしては若過ぎましたけど、エリクセンもいい選手ですね」

――アヤックスの選手はみんな足下が巧いですからね。

 「巧い巧い。足下がしっかりしている。10番のシーム・デ・ヨンクもいい味出していますよね。ベテランっぽい雰囲気だったんで、30歳くらいかなと思ったら23歳でした(笑)」

――グループDは面白かったですよね。マンチェスターCがボロボロでしたけど。

 「僕が思うに、いろんなイレギュラーなことがあった中で、一番選択肢の少なかったのがシティでしたね。シルバがいなかった(3試合で欠場)から」

――選手層は厚いんですけどね。

 「前線は本当に層が厚い。ジェコ、アグエロ、テベス……ここをうまくコントロールしたのがシルバでしたが、彼がケガで離脱するともう選択肢がなかった」

ノックアウトラウンドの戦い方

「180分で考えることが重要」

――CLで勝ち上がるために必要なものとは何でしょうか?

 「いつも言っていることですが、180分で考えなければなりません。(03-04シーズンに)ミランがデポルティーボに4-1であっさり勝利しながら、第2レグで4-0とされて大逆転を許したことがありましたが、そんなことはほとんどないですから。ああいう場合、第2レグは捨て身ですからね。それよりも(第1レグでは)1-0、2-0、2-1といったアウェイゴールも含めて180分で考えることですね」

――ホーム、アウェイの順番の影響は?

 「現役の時はあまり気にしませんでした。第2レグでホーム側だと有利だとよく聞きますが、その意図は僕にはわかりません。あるとすれば、最初にアウェイでやってアドバンテージを持つのか、それともハンデを背負うのか、という見極めができる点でしょうか」

――先にアウェイゴールを食らうのが厄介というのがあるかもしれません。先に1-1としたアウェイチームは、次のホームでは0-0で勝ち抜けられるわけですから。

 「でも昨季のミラン対アーセナルでは、最初にホームのミランが4-0で勝ちましたが、第2レグでアーセナルが3-0とギリギリまで盛り返しましたよね。あれは危なかった」

――前半だけで3-0でしたからね。

 「6-0になっていてもおかしくなかったですよ」

――やはりホーム&アウェイ方式は難しいですよね。ノックアウトラウンドに入ると余計に難しくなるんでしょうか。

 「難しいでしょうね。GSはまず星勘定できるので。今後はアウェイゴールが本当に重要になってきますから。点を取る時間帯なども。第1レグで2-0で負けていたけど、89分に1点返したとなると、サポーターは“負けているけど次に繋がる”と思うから、第2レグのテンションが全然変わってきますよね」

現役Jリーガーにも刺激

「やる上でも語る上でも引き出しが多くなる」

――今後のCLで視聴者に「ぜひここを見てほしい」というポイントは?

 「Rマドリー、マンチェスターU、バルセロナ、バイエルン、アーセナル、ユベントス、パリSGといったビッグクラブに対して、ドルトムントやシャルケ、シャフタールなどの、この中では比較的お金のないクラブが立ち向かっていく姿というのは、日本人の心をくすぐるところがあるかもしれません」

――実際、結構いい勝負をしますからね。バルセロナとRマドリーは別格ですけど。

 「いや、ドルトムントなら勝てそうな気がしますけどね。対Rマドリーでは僕の中では格付けついちゃった感じですし。モウリーニョは今度当たるとしたら、ドルトムント対策をしないといけないでしょう。GSでの2試合は対策を立てていなかったですから。一昨年、バルセロナと4連戦した時には、3試合でそれぞれ違ったやり方を試して自分たちの引き出しを増やした上で、4試合目で本気でぶつかった感じがありましたけど」

――ドルトムントなどが勝つと、ヨーロッパの勢力図が変わってくるかもしれませんね。ちなみに実際にボールを蹴っているプレーヤーも、CLを見ると刺激を受けるものですか?

 「もちろん、見た方がいいですよ。サッカーを好きになる度合いも大きくなるし、自分がサッカーをやる上でも、語る上でも引き出しが多くなる。一般の人にとって海外サッカーは雲の上の存在かもしれませんが、テレビで試合が見られて、しかも選手が戦術や意気込みを語る番組もあって、ずいぶん身近になりましたよね」

――現役Jリーガーも海外サッカーを見ているんですか?

 「今の選手はかなり見ていますよ。Rマドリー対マンチェスターUは絶対みんな録画するでしょうね。ライブで見る選手もいるかもしれない。あっ、でもこの時期キャンプ中で見られないかな。みんな可哀想に(笑)。キャンプのホテルにスカパー!が入っているといいですね」

<名波 浩(サッカー解説者) プロフィール>
Hiroshi NANAMI
1972.11.28 (40歳) JAPAN

順天堂大学卒。大学ナンバー1選手として、95年ジュビロ磐田に加入、開幕戦でスタメンに抜擢される。同年、日本代表に初選出され、代表デビュー戦でいきなり初ゴールを決めた。98年フランスW杯では10番を背負う。代表通算67試合9得点。99-00シーズンには、スパレッティ監督率いるベネツィア(当時セリエA)でのプレーも経験した。現役引退後はジュビロ磐田のアドバイザーを務める傍ら、サッカー解説者としても活躍している。

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Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。