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プレミアにも今季から上陸。猛威を振るう「ヴァー」って何?

2019.09.26

「口」で説明するのは難しい!?

 プレミアリーグにも今季から導入された「VAR」。さっそく猛威を振るっているが、これを「口」で説明するのは少々難しい。そもそも、どう読むかが問題なのだ!

 一般的には「ヴィー・エー・アール」なのだが、一部では「ヴァー」と呼ばれている。英紙『ガーディアン』には「こうやってアルファベットを並べた場合はヴァーと呼ぶべき」と主張する記者がいる。確かにFIFAは「フィファ」だし、UEFAは「ユーエファ」(英語圏) や「ウエファ」(それ以外)と呼ばれている。だが、それはあくまでアルファベット4文字の場合である。VARは「ヴィー・エー・アール」に統一して良さそうだ。

 何の略かについては異論ないはず……と言いたいところだが、昨年のロシアワールドカップの期間中には「ウラジミール・アシスタント・レフェリー」 (Vladimir Assistant Referee) と皮肉を込めて呼ぶ者もいた。たまに大統領や権力者の名前が入ることもあるので注意が必要である(?)。

「PK」にはご注意を

 VARに限らず、最近はSNSの流行により頭文字を取った略語が一般化している。しかしフットボール界、特に英国フットボール界で使う時は注意が必要だ。

 例えば、現在2部のウェストブロミッチ・アルビオンの呼称がそう。「WBA」と表記されることがあるのでつい「ダブリュー・ビー・エー」と呼びたくなるが、略す場合は「ウェストブロム」と呼ぼう。そうしないとお叱りを受ける。

 そうかと思えば、同じ2部の「QPR」はそのまま「キュー・ピー・アール」の呼称で通っており、正式にクイーンズ・パーク・レンジャーズと呼ぶ人の方が少ない。また、アーセナルやチェルシーのファンなども、愛着を持って自分たちのクラブを「AFC」や「CFC」と呼ぶことがある(主にチャントで)。

 基本的なフットボール用語も使い方に注意を払おう。主な例を挙げると「ペナルティキック」。英国では「ペナルティ」や「ペン」と略されることはあっても「PK」(ピーケー) という呼び方は聞かない。だから日本特有の略し方だと思っていたのだが、今夏の女子ワールドカップでアメリカ代表の監督や選手がやたらと「PK!」と主張していた。そういえば、アメリカ人のボブ・ブラッドリー監督がスワンジーを率いた際に「PK」と口にして反感を買っていた。「PK」は“サッカー”用語なので英国で使うと指摘を受けるか、もしくはバルセロナの選手の話題と勘違いされるのが関の山だ(!?)。

 そもそも英国で「Soccer」(サッカー)と呼ぶと白い目を向けられる。だが、もとをただせば「Soccer」だって英国生まれだ。フットボールの正式名称であるAssociation Footballの「A“ssoc”iation」を崩した呼び方なのだから。19世紀に、オックスフォード大学の学生でイングランド代表でもプレーしたチャールズ・レフォード・ブラウンが作った造語だとされている。友達に「ラガー(ラグビーの崩した呼び方)をやろうよ」と誘われ、「僕はサッカーがいいね」と答えたという。

 いずれにせよ、こうやって今のうちに準備をしておけば、シーズン終盤に「WBAがVARによるPenを決めてPL昇格」みたいな見出しを目にしても正しく読めるはず……いや、待てよ。その心配はなさそうだ。そもそもイングランドの2部リーグはVARを導入していない、幸いなことにね!


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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