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今季のUEFAスーパーカップは、大会史上初めて女性審判が担当。

2019.08.14

女子W杯決勝を裁いた審判団が

 現地時間14日にトルコで開催されるUEFAスーパーカップは、同大会において初めて女性が主審を務めることで注目を集めている。

 リバプールとチェルシーによるイングランド勢対決を裁くのは、フランス人女性審判のステファニー・フラッパールさん(35歳)だ。UEFA(男子)のファイナルやスーパーカップといった大舞台で女性が主審を担当するのは初めてのことだという。

 彼女をサポートする副審は、同じくフランス人のマヌエラ・ニコロージさんとアイルランド人のミッシェル・オニールさん。これは今夏の女子ワールドカップ決勝を裁いた女性審判団セットである。昨年の女子U-20ワールドカップ決勝、日本が3-1でスペインを破った試合も担当した審判団なので、日本のファンも見覚えがあるかもしれない。

 そのフラッパールさんは、今年4月にフランスのリーグ1で初めて主審を務めた女性として知られている。リーグ1で初めて女性が副審を担当してから、実に23年後のことだった。そんな歴史的な試合となった4月のアミアン対ストラスブールのマッチレポートを、英紙『オブザーバー』が紹介している。「我々は彼女の一挙手一投足に注目した」とフランスの『レキップ』紙はつづったという。

 「試合前の芝のチェック、ウォームアップ、最初の判定、ランニングなど。だがしばらくすると、すっかり彼女のことを忘れていた。我々は彼女に注目しなくなっていたのだ。選手を含めたピッチ上の23名で、最も判断ミスが少なかったのは彼女だったと思う」

フランス・リーグ1でも勇姿が

 フラッパールさんは、今シーズンからリーグ1を裁く審判グループ23名に昇格している。開幕節は2部のリーグ2を担当したが、定期的にリーグ1のゲームも任されるようだ。男性の審判と同じフィットネステストを受ける彼女は「審判が女性だからといって選手がゆっくり走ってくれるわけではない」と語る。「女の子たちがTVに映る私を見て『可能なんだ』と思ってくれるはず」と。

 初めて女性の主審がUEFAの男子の大会を担当したのは15年も前のことだという。2004年のUEFAカップ予備予選を裁いたスイス人のニコール・ペティニャさんだ。当時の彼女は「女性らしさ」は判定に使えないと考えていたという。「ピッチ上では常に選手と距離を取った。例えばスマイルのような女性らしさを見せることなど論外だった。誤解されるようなことはできなかった」。

 だが時代も変わり、女性審判を取り巻く環境も変わった。今のフラッパールさんにとって「女性らしさ」は決して障害ではないのだ。リールのクリストフ・ガルティエ監督は「彼女(フラッパール)は、人の扱いが上手い」と説明する。「監督は重圧もあるので苛立つことが多い。だが彼女は、そんな監督をジェスチャーやスマイルで落ち着かせることができるのさ」。

 13歳の頃に審判に興味を持ち始めたフラッパールさんは、18歳の時に「選手を続ける」か「審判に専念する」かの決断を迫られたという。今振り返ると、その時も彼女は正しい“判定”を下していたようだ。


Photo : Getty Images

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ステファニー・フラッパール文化

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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