UEFAは7日、イタリアサッカー連盟(FIGC)会長のカルロ・タベッキオに対して、人種差別発言を理由に6カ月の活動停止処分を科したと発表した。
FIGC会長選挙の期間中に自身の支持母体であるアマチュアリーグ連盟の総会で会長候補として演説している中で「イタリアではこの間までバナナを食っていた輩が、今はラツィオでレギュラーとしてプレーしている」と発言。組織の顔になろうとしている人間の明らかな人種差別発言だけに、国内外で大きな波紋を呼んだ。
驚きはこのレベルの失言を“なかったこと”にして、そのままタベッキオが当選したこと。その背景には、現実主義のイタリアらしい事情が隠されている。
今回のFIGC会長選挙は守旧派のアマチュアリーグ連盟会長タベッキオと、改革派のFIGC副会長デメトリオ・アルベルティーニの一騎打ちだった。アルベルティーニはイタリア代表強化および若手育成のために、スペインなどで認められているBチームの下部リーグ登録や、日本も今シーズンから始めたアンダー世代代表の下部リーグ登録などを提案していたが、既得権益を侵されることを嫌われて、彼の支持基盤は選手協会と監督協会と改革を望む1部のセリエAクラブのみ。その他はすべてタベッキオ支持という情勢だった。
ちなみに、FIGC会長選挙における代議員数の配分比率は以下の通り。
セリエA:12%/タベッキオ支持
セリエB:5%/タベッキオ支持
レーガ・プロ(3部、4部):17%/タベッキオ支持
アマチュアリーグ連盟:34%/タベッキオ支持
選手協会:20%/アルベルティーニ支持
監督協会:10%/アルベルティーニ支持
審判協会:2%/タベッキオ支持
失言後、一部のセリエAクラブはアルベルティーニに鞍替えしたが、その他の票は動かず。自らの利益を保障してくれるタベッキオが圧勝し、イタリアサッカー界の改革はまたしても先送りされることになった。
(参考:月刊フットボリスタ12号/片野道郎『CALCIOおもてうら』)