日本代表で右SBのポジションを争うシャルケの内田篤人とハノーファーの酒井宏樹。前半戦はそれぞれのチームで常時出場をしていた2人のパフォーマンスは、データにどう反映されているのだろうか。
比較をしてみると、最も差が出たのはパス成功の本数だ。1試合平均で10本以上も内田が上回っていた。内田はチームの中で攻撃の起点としての役割を果たしており、シャルケの攻撃は早い段階から内田にパスが回って来てそこから攻撃が展開される。一方で、ハノーファーは右サイドMFのシュティンドルが中に絞ってボール回しに参加し、酒井宏はそれによって生じた前方のスペースを利用して高い位置まで上がり、そこでボールを受ける場面が多い。
また、チームのボール支配率はそのまま攻撃時間の差に表れる。[4-2-3-1]でポゼッションを基調とするシャルケの平均ボール支配率が51%だったのに対し、[4-4-2]で堅守速攻のスタイルを掲げているハノーファーは49%。実際、チームのパス成功本数を見るとシャルケが339本、ハノーファーは264本とシャルケの方が1試合平均で約75本多くなっている。チームのスタイルの差が、両者のパス本数の差に影響しているのだ。
内田はボールに絡む回数は多いが、基本的にバランスを取りながら守備のリスクを管理する。一方の酒井宏は高い位置にポジションを取る場面が目立つ。それにもかかわらず内田が3アシストを記録している一方で、酒井宏のアシストは0。これは内田の方がいざ攻め上がった時により効率的にチャンスを演出し、得点に結び付けていることを意味している。またサイドを駆け上がってクロスを出すだけでなく、中に入って行く動きを織り交ぜることで前方にいる相手DFの注意を引き付け、それが決定機に結び付いているのも確かだ。
酒井宏はライン際で勝負するタイプだけに、クロスが味方のフィニッシャーにしっかり合うかは生命線。鋭い攻め上がりから高速クロスに持ち込むプレーはスロムカ監督にも高く評価されているはずだが、前線のディウフやソビエフにいい形でフィニッシュさせるためにクロスのタイミングや精度をさらに改善したい。
両者に共通するのはシュートがほとんどないこと。SBには基本的に横からのパスやクロスが求められるが、最近はバイエルンのアラバに象徴されるようにSBのシュートが攻撃の幅を広げる。闇雲に打つ必要はないが、チャンスと見れば積極的にシュートを狙う場面が増えてもいいだろう。2人がブンデスリーガでパフォーマンスを上げるほど、日本代表にも良い効果をもたらす。残りのシーズンも切磋琢磨して、高い評価を得ていってほしいものだ。
(文/河治良幸)
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