選手の出来や監督の采配が分析されるように、
審判のパフォーマンスもまた評価の対象であって然るべき。
前回南アフリカW杯でも全64試合をチェックしジャッジングを分析した『footballista』編集長の木村浩嗣が、判定の内容とその正誤を、審判のたたずまいや在り様も含めてジャッジする。
【GROUP E スイス 2-1 エクアドル】
主審
ラフシャン・イルマトフ(ウズベキスタン)
副審
アブドゥシャミドゥロ・ラスロフ(ウズベキスタン)
バカディル・コフカロフ(カザフスタン)
ファウル数
スイス:12/エクアドル:15
イエローカード
スイス:1/エクアドル:1
レッドカード
スイス:0/エクアドル:0
劇的な最後には素晴らしい演出家がいた。カウンターの応酬となった終盤もイルマトフは選手並みの走力で走り切り、スイスのカウンターにも並走。アドバンテージでエクアドルのファウルを流して決勝点を見届けた。4年前の南アフリカW杯では見られなかった笑顔はひと回り成長した証か。69分にスイスのゴールをオフサイドで取り消したのは明らかな誤審。が、抗議する選手がいなかったほどの微妙なプレーだったから、それ以外の名ジャッジに免じて許すべきだろう。
【GROUP E フランス 3-0 ホンジュラス】
主審
サンドロ・リッチ(ブラジル)
副審
エメルソン・デ・カルバーリョ(ブラジル)
マルセロ・ファン・ガッセ(ブラジル)
ファウル数
フランス:13/ホンジュラス:14
イエローカード
フランス:3/ホンジュラス:4
レッドカード
フランス:0/ホンジュラス:1
試合前、フランスのデシャン監督が「ホンジュラスは暴力的なチーム」と発言したことで荒れた試合となったが、選手に落ち着きを伝える態度で裁き切ったことは評価できる。レッドカードも含め乱れ飛んだカードはすべて妥当なもの。PKの判断も正しかった。2点目はゴールラインテクノロジーがなければ幻のゴールになったかもしれず、テクノロジーの必要性を強烈に印象付けた。効果絶大のバニシングスプレーと併せて、今後は導入が当たり前になるのではないか。
【GROUP F アルゼンチン 2-1 ボスニア・ヘルツェゴビナ】
主審
ジョエル・アギラール(エルサルバドル)
副審
ウィリアム・トーレス(エルサルバドル)
ファン・スンバ(エルサルバドル)
ファウル数
アルゼンチン:10/ボスニア・ヘルツェゴビナ:14
イエローカード
アルゼンチン:1/ボスニア・ヘルツェゴビナ:1
レッドカード
アルゼンチン:0/ボスニア・ヘルツェゴビナ:0
アルゼンチンのゆったりとしたリズムに乗ってジャッジをするのは楽だったはず。判断が分かれるような見極めの難しい場面は、まったくと言っていいほどなかった。ただ、その中で小さなミスや見落としがあった。16分にハンドで流れを切ったプレーはカードを出すべき。61分のジェコのオフサイドは同一線上だから流すべきだった。さらに88分、メッシの足首を踏み付けたボスニア・ヘルツェゴビナの選手(MFビシュチャ)にはイエローを出すべきだった。
(文/『footballista』編集長 木村浩嗣)