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Photo: Getty Images
日本の過去4大会を見ると、初戦で勝ち点を奪った2大会(02年、10年)は決勝ラウンド進出、黒星を喫した2大会(98年、06年)はGS敗退と、法則通りの結果が出ている

2014.06.10 10:00

SPECIAL

2014 FIFA WORLD CUP BRAZIL

初戦の勝利には1勝以上の価値がある

W杯スペシャルガイドブック 特別公開コラム

4年に1度の祭典、ワールドカップ開幕までとうとうあと2日。
はやる気持ちを抑えつつも、今か今かとその日を待ちわびている方も多いことだろう。
そこで今回は、全国書店で好評発売中の2014 FIFA WORLD CUP BRAZIL SPECIAL GUIDEBOOKで紹介した、ワールドカップにまつわる七つの法則を特別公開!
これを頭に入れて、来たる本番に向けてさらに想いをめぐらせてほしい。

 

NIPPONも世界も、始め良ければすべて良し

今大会は初戦からいきなり面白い。
スペイン対オランダ、イングランド対イタリア、ドイツ対ポルトガルなど好カードが目白押しなのだ。
1998年スペイン、2002年フランスなど過去、出足につまずいた多くの強豪が志半ばで姿を消した。
初戦がなぜ重要なのか。セオリーを解き明かし、強豪対決の見どころを押さえた。

 

 初戦に勝てばグループステージ突破の確率は85%、しかし負ければたったの9%――。これだけ有無を言わせぬ数字がある以上、「GSの運命は初戦で決まる」と言い切ってもバチは当たらないだろう。

 前ページの七不思議④でも見たように、1998年大会以降、GSで2位までに入らなければ勝ち上がれなくなってからは、それ以前と比べて星勘定がずっとシビアになっている。他力本願にならずに自力で勝ち上がるためには、3試合のうち2勝以上、あるいは1勝止まりでも残り2試合を引き分けて、勝ち点5のラインをクリアすることが必要になる。これが勝ち点4(1勝1分1敗)になると、98年以降4大会での計23例中、突破が11(48%)、敗退が12(52%)で、確率はほぼ50/50。勝ち点3以下なら、勝ち上がりの可能性は実質ゼロだ。

 単純に考えれば、たとえ初戦を落としたところで、残り2試合に1勝すればほぼ半分の確率で勝ち上がれるわけだから、まだそれほど深刻な状況とは言えないようにも思われる。しかし現実に目を向けると、初戦を落としたチームが勝ち上がったケースは、過去4大会の46例中わずか4例しかない。これは単純な確率論を大きく下回る数字である。

 残る42例の大半が、敗退するべくして敗退したチームだという事情は勘案する必要がある。だが優勝候補、あるいは勝ち上がりが順当と見られていた強豪が、初戦を落としてそのままずるずると敗退に追い込まれるケースが多いことも事実だ。

 例えば1998年のスペインは、初戦の後半半ばまでナイジェリアを終始リードしながら、たった5分の間に2点を食らって2-3の逆転負け。続く2戦目にパラグアイと0-0で引き分け、最終戦は大勝したものの勝ち点4で敗退の憂き目に遭った。2002年のフランス、ポルトガルも、初戦に敗れたつまずきを挽回できないままGSで大会を去っている。

 このレベルの「勝ち上がって当然」という国になると、初戦を落としただけで内外から巨大なプレッシャーがのしかかる。たった1試合戦っただけでもう後がないと追い詰められる状況が、GS突破を当然視されてきたチームに大きな精神的困難をもたらすことは想像にかたくない。実際、黒星スタートでGSを突破した強豪は、2010年のスペインただ1例。「初戦に負けない」ことは単純な星勘定以上に、その結果がGSを戦う上でのメンタルな状況を大きく左右するという意味で重要なのである。

■強豪対決。引き分けOKとも言えない

 それを踏まえて今大会の組み合わせを見ると、興味深いのは、グループBのスペイン対オランダ、Dのイングランド対イタリア、Gのドイツ対ポルトガルと、強豪同士が初戦にぶつかる試合が多いところ。

 もしここで勝ち負けが付いた場合、負けた方はかなり大きな困難に陥るだろう。マスコミの厳しいプレッシャーと敗退への恐怖から、続く第2戦で本来の力を出せず状況がさらに悪化するというケースも、過去にはいくつもある。例えば上述のスペイン、フランスはともにこのパターンで2戦目を引き分け、敗退に追い込まれている。

 では、無難に引き分けを狙えばいいのかというと、そうとも言えないのが悩ましいところだ。実際、仮に勝ち点1を得たとしても、両チームの置かれるメンタルな状況は決して楽なものではない。次の2戦目で勝利が義務づけられることに変わりはないからだ。前回の南アフリカでは、初戦でウルグアイと0‒0で引き分けたフランスに内紛が起こってチームが崩壊、残り2試合を連敗してグループ最下位で敗退するという波乱があった。

 “2強2弱”のグループならまだしも、残る2チームの中にそれなりに手強い相手がいる場合、強豪同士の初戦ドローはその後の歩みに予想以上の困難を引き起こす可能性がある。今回もグループBにはチリ、Dにはウルグアイ、Gにはガーナと、いずれも侮れない伏兵が潜んでいる。これらの相手が初戦でしっかり勝ち点3を確保し、精神的に余裕を持って第2戦に臨んでくるようだと、番狂わせのお膳立てとしては申し分ない状況になる。その点から見ると、スペイン、イングランド、ドイツが初戦で引き分けた場合は「要注意」と言えるかもしれない。

 初戦の結果によって、チームを取り巻く環境が劇的に変わってくるという点では、強豪国でも中堅国でも違いはない。上述のチリ、ウルグアイ、ガーナがサプライズを起こすためには、初戦の勝ち点3が絶対条件になるだろう。また、グループ2位争いの直接対決になりそうなEのスイス対エクアドル、Hのロシア対韓国は、その結果がグループの展開、そしてそれ以上に当事国の運命を大きく左右する予感がある。

(文/片野道郎)

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