#044_special

2017.04.11 15:45

FEATURE

サッカーとメンタルのはなし

月刊フットボリスタ第44号特集

「メンタルとは心ですか? それとも頭ですか?」

世界的に有名なオランダのコンディショニングコーチ、レイモンド・フェルハイエンは、彼の講習を受けに来たエキスパートたちにこう問いかけるという。

サッカーの世界では、目に見えないが大切だと思われていることがある。メンタルだ。
いくら高度な技術があり、いくら綿密に戦術を突き詰めても、緊張して自分を見失ってしまえば、本来の力を発揮することは不可能だ。
「今日の我われはメンタルに問題を抱えていた」というのは監督の常套句でもある。

一口にメンタルといっても、文化や言語の違う場所でプレーする際の「環境適応」、ネガティブな心理にとらわれず感情をコントロールする「メンタルコンディショニング」、チームを集団として結束させる「キャプテンシー」、選手を鼓舞する監督の「モチベート術」、素早くピッチ上の状況を認識し適切なプレー選択をするための「認知と判断」など、目に見えないけれどサッカーにとって大切な要素はたくさんある。

冒頭のフェルハイエンの言葉は「目に見えないものを見えるようにする」メンタルの再定義の話である。
人の心は曖昧で不可侵で神聖なものという従来の価値観を壊し、科学の力でメンタルにアプローチするという挑戦だ。
ここ10年間で目覚ましい発展を遂げたフィジカルの分野がそうだったように、これからはメンタルの分野が解析されていくことになるのだろう。
侵してはならない領域である気もするし、でも知りたいという好奇心もある。
フットボリスタの立場はその半々だが、見えないものが少しでも見えるようになれば幸いである。


THEME 1 環境適応
日本人はなぜ、スペインで成功できないのか?

INTERVIEWS
乾 貴士(エイバル)

幸せな環境
酒井宏樹(マルセイユ)
ブレない気持ち、その先に

選手のメンタルを支える「見えないテクニカルチーム」

心理カウンセラーチームの名前が公式サイトに載っていない理由を尋ねると、約20年間セビージャに務めるこの分野のパイオニアであるガミートはこう答えた。本来メディアの取材は受けないそうだが、クラブの好意で特別に時間をもらった。違った視点で選手を支える「見えないテクニカルチーム」の秘密に迫る。

サッカーと環境適応のはなし
バロテッリ/ボージャン/ポドルスキ/吉田麻也


THEME 2 メンタルコンディショニング
カウンセラー、学者、コーチ…影響力を増すメンタルのプロたち

メンタルをめぐる新たな仕事
01「目標へ導く」メンタルコーチ

ロベルト・チビタレーゼは、イタリアナンバー1のメンタルコーチだ。下部リーグでくすぶっていたパボレッティやペターニャをブレイクさせた手腕で注目を集めている。「サッカーの世界では今までなかった仕事なので、保守的な人々は受け入れたがらない」という謎に包まれた専門領域の中身を語ってもらった。

02「心をケアする」パーソナル・カウンセラー

サンティアゴ・リベラ・マティスは、特定のクラブに所属せず、個人と契約を結ぶ心理カウンセラーだ。心理カウンセリングに対する社会的理解が日本より進んでいるヨーロッパの国とはいえ、「メンタルが弱い」というレッテルを張られるのを嫌がる人間は多い。周りに知られたくない選手や監督が、パーソナル・カウンセラーの扉をノックすることになる。

INTERVIEW
相良浩平(フィジオセラピスト)
ケガを予防するメンタル改善法

昨季のオランダ2部リーグを制したスパルタ・ロッテルダムはケガ人が極端に少なかった。その立役者がサッカーのピリオダイゼーション理論を駆使して、綿密にトレーニングの負荷をコントロールしていた日本人フィジオセラピスト、相良浩平だ。「ケガとメンタルの関係を教えてほしい」と申し込んだ取材は、思わぬ方向に発展していった。

「眠り」の科学。ロナウドを変えた“スリープ・コーチ”の教え
ミランラボで実験、緊張をコントロールする「マインドルーム」
グーナーのメンタルって…アーセナルはマゾヒスト養成場なのか?

サッカーとメンタルコンディショニングのはなし
ルイス・エンリケ/ヒホン/ジェラード/デ・シリオ


THEME 3 キャプテンシー/リーダーシップ
スター、経験豊富、守備者、人として…名主将もいろいろ

INTERVIEWS
ジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)

キャプテンシーの源流
酒井高徳(ハンブルク)
“不変”の新米キャプテン道

サッカーとリーダーシップのはなし
イブラヒモビッチ/ヘンダーソン/ホアキン/エブラ


THEME 4 モチベート術
いかに闘争心を煽ろうか?“猛獣使い”たちの手練手管

INTERVIEW
ホセ・ルイス・メンディリバル(エイバル監督)

戦術も、気持ちも前へ

コンテとチームの規律 6つのポイント

サッカーとモチベート術のはなし
ダルダイ/ピオーリ/グアルディオラ/ラニエリ


THEME 5 認知と判断
脳内(=戦術的)インテンシティを高める

SAP×ホッフェンハイムの次世代トレーニング

対談 エミリオ・デ・レオ×レナート・バルディ
フィジカル+戦術+メンタルの統合型トレーニング

サッカーのプレーは「認知・判断・実行」というプロセスで成り立っているが、近年注目を集めているのは、認知と判断という「目に見えない領域」だ。本誌でお馴染みのトリノコーチ陣が取り入れている戦術的ピリオダイゼーションは、メンタル的な負荷(判断の複雑さ)を考慮して練習メニューを組み立てているという。ヨーロッパサッカーの最先端の現場で行われている統合型トレーニングとは、フィジカルと戦術だけでなくメンタルまで含まれているのだ。

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