#035 special

2016.07.09 11:15

FEATURE

新世代メディアとサッカー

WEB、雑誌、動画…ボーダーレス化する最前線

デジタル時代の到来で、サッカーファンが手に入れられる情報の質と量は飛躍的に向上した。変化の裏にあるのは旧メディアが衰退し、新メディアが勃興する――という単純なストーリーではない。

新聞、雑誌、テレビ、ラジオといった既存メディアとWEBメディアの間には
まだ垣根が存在していることも事実だが、相互侵食は着実に進みつつある。
メディア企業のほとんどは自ら発信する情報チャンネルにWEBを加えているし、
発信源の間でもプロと非プロの垣根が低くなって、ブロガーが商業メディアに寄稿することもジャーナリストがSNSで情報を発信することも、すっかり普通になった。
その結果として、かつて商業メディアが持っていた媒体的な権威のようなものも、かなり薄れてきている。
今情報の受け手にとって「信頼性」をもたらすのは、メディアの「看板」ではなく情報の内容、コンテンツそのものの質だと言っていいだろう。「どこに書いてあったか」よりも「誰が書いたか」、そしてそれ以上に「何が書いてあるか」が勝負ということだ。
書き手にとってはよりフェアでかつシビアな状況になっているが、
同時に受け手にとっても情報のリテラシーが問われる時代になったと言える。

興味深いのは、このようにあらゆる面で相互侵食とフラット化が進む中にあって、
WEB、雑誌、動画といういずれのチャンネルにおいても、既存の枠組みに縛られることなく、
新たな状況を踏まえた革新的な試みに取り組むメディアが現れていることだ。

「紙は終わった」と言われる中にあっても、『THE GREEN SOCCER JOURNAL』や
『エルフ・フロインデ』のようなインディペンデント・マガジンは、
記事のクオリティに加えて紙というマテリアルならではのデザイン性や
オブジェ性を魅力として、多くの読者を持ち高い評価を受けている。
老舗の左派系高級紙『ガーディアン』はWEBでの展開を軸に
メディアミックス戦略を積極的に進めている。
『BBC』や『スカイ・スポーツ』といった放送局も同様だ。
『トランスファーマルクト』のようにWEBならではのデータベース系サイト、
インディペンデント・マガジンのコンセプトと
マルチメディアを組み合わせた『ウルティモ・ウオモ』のようなWEBマガジンから、
『Zonal Marking』やExpG(ゴール期待値)関連のブログのように、
市井のマニアによる専門的な分析サイトまでが共存して、オープンで豊かな言論空間を作り出している。

「読む」だけでなく「観る」方もパラダイムシフトが起きつつある。
日本のOTTサービスの夜明けとも言える『スポナビライブ』や『ダ・ゾーン』は
ライブ動画というフォーマットを進化させ、海外サッカーの視聴環境を大きく変えるかもしれない。
フットボリスタもまた、こうした新たなサッカーメディアコミュニティの一員でありたいと願っている。


【WEB】
デジタル時代の新たなサッカー表現法

インターネットが情報インフラとして社会に普及・浸透し、WEBが紙(新聞・雑誌)、電波(テレビ、ラジオ)と並ぶメジャーな情報プラットフォームになったことで、サッカーをめぐるメディアの仕組みや言説のあり方も劇的と言っていいほどに変化した。
自由度の高いWEBという新たな舞台でサッカーの魅力をより伝えられる表現方法は何なのか? 大手・個人を問わず、可能性を感じさせる取り組みをしている挑戦者たちの声を聞いた。


L’Ultimo Uomo――ウルティモ・ウオモ(イタリア)
『ガゼッタ』を超える新たな権威へ。長文ばかりの「読むサイト」
Sky Sports――スカイ・スポーツ(イングランド)
欧州最大のスポーツネットワークを育てたテレビ局のWEB戦略
The Guardian――ガーディアン(イングランド)
ジャーナリズム精神と収益化の両立を目指す英国メディア界の老舗
Transfermarkt――トランスファーマルクト(ドイツ)
趣味からビジネスへ。ファンと作る「移籍情報版ウィキペディア」
UEFA.com
公式サイトも進化。専属記者がSNSでリアルタイム発信
Zonal Marking――ゾーナル・マーキング(イングランド)
個人メディアからの異例のキャリアアップ
Les Cahiers du Football――カイエ・デュ・フットボール(フランス)
フランスではカルト的人気。ユーモア満載のぶっとんだ風刺サイト
DEAR Magazine――ディア・マガジン(日本)
「領域外」に届けるために、コンテンツに熱を持たせたい
The Players’ Tribune/BBC RADIO 606/YouTuber


進化型サッカー評論
❶ソーシャル時代のサッカー観戦法/❷Instagram活用術/❸新たなシステム表記法
❹ゴール期待値「ExpG」/❺最先端指導理論/❻インフォグラフィック


【雑誌】
独自の世界を構築するインディペンデント・マガジン

「雑誌の斜陽期」と言われて久しい。
しかし、近年のヨーロッパサッカー界では興味深い現象が起きている。
イングランド、ドイツ、スペイン、イタリア、フランスといった主要国はもちろん、
スウェーデン、オーストリア、スイスといったサッカー中堅国でも「インディペンデント・マガジン」と呼ばれるユニークな雑誌が相次いで創刊されているのだ。
なぜ今、あえて雑誌を作るのか? どういった内容なのか? 採算は取れているのか?
紙メディアの新たな可能性を感じさせる、一大ムーブメントの秘密に迫る。


Panenka――パネンカ(スペイン)
「サッカーの夢を取り戻す」11のマニフェストに込められた想い
11 FREUNDE――エルフ・フロインデ(ドイツ)
ファンジンから始まった異色のカルチャーマガジン
Undici――ウンディチ(イタリア)
文化誌とのコラボレーションで「サッカーの深遠を掘り下げる」

ネット世代があえて作るインディペンデント・マガジン案内


【動画】
動画の時代。OTTサービスの夜明け

OTTとはOver-The-Topの略称で、従来のインフラに頼らないインターネット回線を利用したコンテンツ配信のことをいう。
中でも注目されているのがPCやスマートフォンで見られる動画コンテンツだ。
日本でも『スポナビライブ』『ダ・ゾーン』というOTTサービスが開始されるが、
海外サッカーの視聴環境はこれからどう変わっていくのか?
テクノロジーの進化がもたらすサッカー観戦の未来像について思いをめぐらせてみる。


スポナビライブ(日本)
海外サッカーの視聴環境が激変?『スポナビライブ』がもたらす多様性
DAZN――ダ・ゾーン(日本)
黒船来襲? それとも…世界的デジタルスポーツ企業「パフォームの戦略」
CLUB OFFICIAL TV――クラブ公式テレビ
身内だからこそ、ここまでできる? オフ・ザ・ピッチを映像で魅力的

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